研究課題/領域番号 |
19K21900
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
齊藤 昭則 京都大学, 理学研究科, 准教授 (10311739)
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研究分担者 |
坂野井 健 東北大学, 理学研究科, 准教授 (80271857)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | 大気光 / オーロラ / 電離圏 / 中間圏 / 南極 / 海上観測 |
研究実績の概要 |
高感度小型CMOSカメラと3軸制御ジャイロ機構を組み合わせ、コンパクトで、揺れが激しい船舶で観測が可能な全天大気光・オーロラカメラ装置の開発を行った。光学カメラには、検出器に高感度・低雑音特性のるCMOSセンサーを搭載し、電子冷却することで長時間露光を可能とした。大気光の光量は微弱なため、高感度なカメラと、数秒の露光時間を必要とする。このカメラに市販魚眼レンズと波長630nmフィルターを取り付けることで、電離圏の酸素イオンに発光量が比例する波長630nm大気光変動を露光時間数秒間で撮像することができる装置の試作を行った。長時間露光による「ブレ」をなくすために、このカメラに3軸制御ジンバル機構を取り付け、最大振幅±30度にも達する船舶の揺れを除去し、数秒間露光時の詳細画像 分解能を可能とした。観測データは小型PCに取り付けられたHDDに保存し、船舶が帰港した後に回収を行ったが、通信量の限られた回線を用いたQuick Lookのシステムも整備し観測の監視を行えるようにした。カメラ ユニット、3軸制御ジンバル機構、処理・記録系一式は、アクリルドームをもつ耐候ケースに収納し、室内に設置した観測制御装置とともに国立極地研究所の南極観測船「しらせ」に搭載し2019年11月から2020年3月までの観測を実施した。寒冷地での観測のために耐候ケースにはヒーターを設置し、高温・湿潤地での観測のため、室内に設置したクーラーから耐候ケースへの送風を行った。「しらせ」が日本からオーストラリアを経由して南極昭和基地に到達する往路では主に大気光の測定を行い、復路の南極昭和基地からオーストラリアまではオーロラの測定を行い、その後の日本までの航路で再び大気光の観測を行った。これらの試験観測により本システムによる初期観測データの取得に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
国立極地研究所の協力を得て、2020年度に予定していた南極観測船「しらせ」における船上での試験観測を2019年11月より実施することができたため、当初の計画以上に進展している。また、GNSS受信機については、船舶搭載に適した小型軽量化の検討を行いGNSS受信機チップ(ublox社ZED-F9P)を用いるものに変更したため、備品として購入を予定していた「GNSS受信機」は消耗品としての購入となった。
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今後の研究の推進方策 |
試験観測は早まったが、計画通りに装置開発・観測とその結果による装置改良を実施する。2020年度も南極観測船「しらせ」による観測を実施する予定で準備を進めているが、新型コロナウィルスによる影響で2020年度の南極観測船「しらせ」による観測が変更となる可能性がある。その場合も、当初の研究実施計画における想定の通りに国内における船舶観測や地上観測などによって開発の実施に変更する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
43357円の次年度使用額は、カメラシステムに使用した消耗品を既存の消耗品を用いたために生じた。次年度においては改良のために新規に消耗品を購入して利用する予定であり、そこに次年度使用額を使用する予定である。
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