研究課題/領域番号 |
19K21905
|
研究機関 | 気象庁気象研究所 |
研究代表者 |
足立 光司 気象庁気象研究所, 全球大気海洋研究部, 主任研究官 (90630814)
|
研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
|
キーワード | 氷晶核 / 電子顕微鏡 / エアロゾル / 気候変動 |
研究実績の概要 |
エアロゾル粒子の中に、気候変動に影響を与える氷晶雲の生成に重要な高い氷晶核能を持つ粒子が存在する。それらの限られた粒子が氷晶雲の形成に非常に重要となり、また気候にも大きな影響を与える。それらが氷晶を形成する過程が、どのような物理・化学的性質によって引き起こされているかは、まだ十分に理解されていない点が多い。そのため、本研究ではそれらの未解明な点を個別粒子分析で明らかにすることを目的とする。実験では、冷凍チャンバーを用いた個別粒子分析実験を行い、高い氷晶核能を持った粒子がどのような物理化学的特徴をもち、どのようなメカニズムで高い氷晶核能を持つのかを明らかにする実験を行った。特に、今年度は新規手法の条件を確定させる実験に重点を置き、標準ダスト粒子などを用いた実験を行い、実験手法の確立を行った。その後、高い氷晶核能を有すると考えられているバイオエアロゾルと鉱物粒子が混合した、アマゾン地域での試料の氷晶核能実験を行った。その結果、バイオエアロゾルが鉱物粒子より優位に高い氷晶核能を持つものの、一部の試料では鉱物粒子も高い氷晶核能を持つことが明らかとなった。特に、鉱物粒子と内部混合した水溶性成分が氷晶核能に影響を与えている可能性が示唆された。また、北極の航空機観測で高い氷晶核能が得られたフライト中の試料を電子顕微鏡分析で調査した。その結果、海からの影響が高い試料において氷晶核能が高い可能性が分かった。また、他のフライトにおいても、氷晶核能を有する可能性があるダスト粒子などの個数割合を解析した。以上の結果は、電子顕微鏡と光学顕微鏡を用いた新たな個別粒子分析解析で得られており、氷晶核能形成メカニズムの解明に向けて多くの知見が得られた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、おおむね順調に進展している。特に、北極での航空機観測をもとにした氷晶核能実験をドイツの研究グループと行い、想定以上の成果を得て現在論文投稿中である。
|
今後の研究の推進方策 |
今後も室内実験を進める予定である。また、確立した技術を野外観測で得られた試料に応用して、実際の野外観測の結果と室内実験で得られた成果を解析する。不安な要素としては、COVID-19の影響で、北極での観測が休止している点があげられる。渡航が可能になり次第観測を再開する予定であるが、それまではこれまでに得られた試料の解析を重点的に進める予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2019年度の実験は、備品購入を伴う新規実験よりも既存の機器を使う顕微鏡実験を優先して実験を行った。そのため、2019年度に購入であった備品購入を2020年度に行う予定であるが、実験は前倒しで行っているため、2020年度の研究計画に支障はない。また、旅費は2020年1月以降に行う予定であった関係者との会合がCOVID-19の影響で延期となり、2020年度に繰り越した。
|