エアログラファイト球殻粒子1個レベルの力学特性:結晶性向上を目的として、昨年度の結果をもとに、エアログラファイト粒子の熱処理を最大2000℃で行った。本年度4月に納入予定の高温加熱炉が、新型コロナウィルス関連の影響で納入が延期され、さらに納入後に発見された瑕疵のために半年以上研究全体の遅滞を招くこととなった。しかしながら、熱処理した粒子1個レベルの圧縮試験による力学特性評価は、概ね計画通り終了できている。一般に黒鉛状物質は熱処理温度が高いほど結晶性が向上することから疲労特性もそれに伴い向上すると予測していたが、実験結果からは、2000℃で熱処理した試料に比べ、より低温で処理する方がより柔軟で繰り返し変形に強いことが示された。2000℃では、この粒子のシェル構造をなすナノロッドの黒鉛層における欠陥修復と同時に、隣接ナノロッド同士のコアレスも生じることが分かった。エアログラファイト粒子の超柔軟な変形挙動は、ナノロッド連結部で大きく湾曲した黒鉛層の個々の板バネ的な変形特性に由来すると考えられ、粒子全体の結晶性制御だけでなく、シェル構造自体のモルフォロジーによってもこのマイクロ粒子の力学特性が制御されることが示された。独特なモルフォロジーの球殻粒子の変形についてもより詳細に理解するため透過電子顕微鏡による変形過程その場観察を検討したが期間内に間に合わず、2021年度に追実験する予定である。 複合樹脂の作製、評価:昨年度に引き続きエアログラファイト粒子―PDMS複合化の条件最適化を行った。空気並みに軽量なエアログラファイト粒子は混練の難しい材料だが、結果として、十分に分散し、混練による気泡残留のない複合化条件を確立し、圧縮試験、引張試験、摺動試験用試験片等を作製した。計画していた特性評価も一連の研究遅滞の皺寄せのため一部研究期間内に終了せず、2021年度に行った後本研究を総括する。
|