研究課題/領域番号 |
19K21921
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中谷 彰宏 大阪大学, 工学研究科, 教授 (50252606)
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研究分担者 |
LEI XIAOWEN 福井大学, 学術研究院工学系部門, 准教授 (50726148) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2023-03-31
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キーワード | 変形体力学 / メタマテリアル / ひずみエネルギー / マルチスケール解析 / インテリジェント構造 |
研究実績の概要 |
機構の“あそび”(バックラッシュ、クリアランスなどとも称される)が持つ、構造系の力の分散、さらには、安全・安心の担保に関連する能動的意義を、積極的に評価するために、本研究では、ケーブル(線材)と剛な部材を組み合わせにより決定される三次元空間の中で自立する広義のテンセグリティネットワーク構造を考える。ケーブルの一部に応力弛緩性を導入し、力学特性の変化、さらには力学的メタ構造と呼ばれる特異な機能性を見出すことを目的としている。 この目的を達成するために、2019年度と2020年度に構築した“あそび”を有するテンセグリティモデルの動力学研究をさらに発展させ、2021年度は、“南京玉すだれ”の数理モデリングに着手した。南京玉すだれは、剛体棒と紐輪からなる大道芸の道具であり、剛体棒と紐輪という剛性が極端に異なるテンセグリティ構造といえる。その運動において、隣接する剛体棒が違いに長手方向に平行な方向に相対運動することにより、構造全体がさまざまな形態に変化することを興じ観客に魅せることを主とした遊具であるが。展開構造物としての応用の観点からその機構には学ぶところが大きい。 その機構の本質は、運動の際に隣接する剛体棒間の距離が紐輪の閉曲線の長さによって規定される一定値以下になるという不等式制約条件、また、紐輪が終端で結絡することによるロック機構がその相対運動の上下限を特徴づけるという不等式制約条件、および、紐輪どうしがロックまたは解放された状態で運動する状況という不等式制約条件からなる“あそび”を有する構造であることを明らかにした。さらに二次元面内での南京玉すだれの運動をマルチボディダイナミクスにより解析するコードを作成し、シミュレーションを行った。解析から、“あそび”を積極的に組み入れた人工物創製の可能性に結びつく知見を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画で想定していたケーブルの冗長性を考えた複雑な高次の不静定問題の非線形性解析を動力学・静力学的に解析するコードを開発し解析を行うとともに、南京玉すだれという“あそび”を積極的に組み入れた構造に注目する解析を行い、人工物創製の可能性に向けた知見を見出した。
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今後の研究の推進方策 |
自立テンセグリティ構造および双安定性を有する単位構造からなる格子構造の力学モデルに加えて、大小さまざまな不等式制約条件が組み合わさった“あそび”を有する構造対して、外力の付与、強制変位条件での応答について、力学的解析、幾何学的解析を行う。特に変位制御下での運動特性について周波数応答における振幅フィルターとしての機能化手法を確立し、メタ構造のプロトタイプの設計手法を確立する。また構造の部材長などをリアルタイムに変化させるメカニズムを想定し、あそびを積極的に生み出す機構を内在した人工物創製の可能性に挑戦する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症拡大予防の観点から、学会発表、旅費を伴う調査、オフラインでの打ち合わせ等への配慮を行い、力学モデルの定式化と計算機シミュレーションのためのコード実装について優先的に取り組んだ結果、一部次年度使用額が生じた。2022年度は、プロトタイプモデルの作成、計算機シミュレーション、成果公表のために、次年度使用額と当該年度分として請求した助成金とを合わせて使用する計画である。
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