研究課題/領域番号 |
19K21927
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
河合 宗司 東北大学, 工学研究科, 教授 (40608816)
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研究分担者 |
寺島 洋史 (石原洋史) 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (20415235)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | 数値流体力学 / 詳細反応機構 / 燃焼 / 熱流体工学 / LES |
研究実績の概要 |
本年度は、初年度で得られた研究成果を基盤とし、詳細反応機構に基づく乱流燃焼LESモデルの開発を進めた。まず、構築する乱流燃焼LESモデルではどのような物理現象を適切にモデル化すべきか詳細に解析することを目的とし、乱流と火炎面の干渉現象を単純化した単独渦と火炎面干渉現象を対象に、渦の長さスケールと速度スケールの2つをパラメータとしたDNS解析を実施した。またDNSと同じ条件を用い、粗い格子上で昨年度開発したLESの火炎面拡大モデル(乱流燃焼効果のLESモデルは未実装)を用いた解析を実施し、DNSデータとの比較から、乱流燃焼LESモデルで考慮すべき物理現象の特定を試みた。結果、現状のLESの火炎面拡大モデルでは渦・火炎面干渉時に火炎面の伝播に遅れが生じることを確認した。またその原因は、火炎面拡大により曲率を持った火炎面に起因する平滑化効果が強くなったためであることを明らかにした。これらの結果を受け、LESの火炎面拡大モデルに対し、火炎面の平滑化効果を弱める乱流燃焼LESモデリングに着手した。 また昨年度に開発した層流火炎を対象としたLESの火炎面拡大モデルの実問題への適用では、急速圧縮機実験との比較から、ノッキング末端ガス自着火タイミングや末端ガス残存量を正確に予測できることを示した。これは、本開発モデルが実用的な圧縮機内の層流火炎伝播速度を正確に予測でき、多次元火炎伝播にも適用可能であることを示すものである。また予測精度を維持しつつ使用する格子点数を大幅に削減することにも成功しており、詳細反応機構を用いた燃焼実問題解析の適用可能性を大きく前進させることができた。また本モデルの適用により、低温酸化反応に起因し発生する圧力波擾乱が火炎振動およびノッキング強度増大の原因になることを明らかにしており、これまで未解明であったノッキング基礎物理現象の解明に役立てられている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、単独渦と火炎面干渉現象のDNS解析のセットアップに試行錯誤が必要であり時間がかかったが、DNSデータベースの構築に成功し、火炎面拡大モデルを用いた解析結果との比較から、本研究課題の一番の難所と考えていた詳細反応機構および火炎面拡大モデルを用いたLESにおける乱流燃焼モデルとしてモデル化すべきキーとなる物理現象を特定することができた。また実問題への適用でも、昨年度開発した層流火炎を対象とした火炎面拡大モデルを用いることで大幅な計算コストの削減に成功し、実問題であるノッキング基礎物理現象の解明に役立てられており、詳細反応機構を用いた燃焼実問題解析の適用可能性を大きく前進させることができた。このような状況から、達成度はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度特定した火炎面拡大モデルを用いたLESにおける乱流燃焼モデルとしてモデル化すべきキーとなる物理現象、すなわち曲率を持った火炎面に起因する平滑化効果のLESモデリングの構築と検証を進める。モデルの検証では、本研究で構築した渦・火炎面干渉現象のDNSデータベースとの直接比較から、構築するモデルの妥当性を詳細に検証し、適切な乱流燃焼モデルを確立していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症拡大のため、参加を予定していた国際・国内会議が全てオンライン開催となり、次年度使用額が生じた。本研究課題の一番の難所と考えていたLES乱流燃焼モデルとしてモデル化すべき物理現象を特定できたため、次年度のモデル構築と検証を加速させ、さらなる成果公表のために予算を活用する計画である。
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