研究課題/領域番号 |
19K21930
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
嘉副 裕 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 講師 (20600919)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | ナノチャネル / 細胞膜 / バイオミメティクス / 流体工学 |
研究実績の概要 |
100 nm空間を利用するナノ流体工学が進展し化学分離・分析法の超高性能化が実現しつつある。一方、同スケールの細胞・小胞は既存の化学の方法ではできない多種多様な機能を有しており、その中の細胞膜と膜タンパクは様々な分子種の超高選択的輸送や濃度勾配を逆行する能動輸送など特異的な役割を担う。そこで、細胞膜と膜タンパクをナノ流路に組込み新しいナノ流体機能デバイスを創成することを将来的な目標とし、本研究では独自のナノ空間混相流体制御技術を活用したナノスケール脂質二重膜組込技術を開発する。そのために、研究項目A)ナノ流路の設計・作製と平行二相流形成の確認、研究項目B)脂質二重膜組込の検証に取り組む。 2020年度は、2019年度に抽出した課題にもとづき、研究項目Aを中心に研究を進めた。ナノ流路内の脂質二重膜生成におけるクロロホルムと水の油水平行二相流の液液界面を安定化させるために、ナノ流路にナノ構造体を組み込むことを考案し、数値解析により流路設計を検討した。検討結果にもとづきナノ流路とナノ構造体の形状・サイズを決定し、これにもとづきナノ流体デバイスを作製した。作製した流路のガラス表面をトリメチルシランで疎水修飾し、流体操作の検証実験を行った。その結果、脂質二重膜合成に必要な水水二相流→油水平行二相流→水水二相流の溶媒切換を油水界面を安定化させながら実現することに成功した。以上の結果を踏まえて、次年度は脂質二重膜組込の検証に取り組む。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ナノ流路における油水平行二相流の溶媒切換と界面安定化が当初想定していたよりも複雑な流体制御を必要とすることが判明し、問題を解決して研究項目Aを達成するために当初計画よりも期間を要したため。
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今後の研究の推進方策 |
研究項目Aで達成した流体操作にもとづき、研究項目Bの脂質二重膜組込に取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究項目Bのナノ流路への脂質二重膜組込実験に着手できなかったため、当該実験のための消耗品費と成果発表のための旅費が未使用であった。次年度は、実験のための蛍光脂質等の消耗品を購入し、実験結果をまとめて成果を発表する。
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