研究課題/領域番号 |
19K21934
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
井上 智博 九州大学, 工学研究院, 准教授 (70466788)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | 液体金属 / 微粒子 / 液滴 / 分裂 / 表面張力 / 分子拡散 / 高速度可視化 / 温度計測 |
研究実績の概要 |
積層造形や粉末冶金に用いられる直径10マイクロメートル程度の金属微粒子は、従来、高速の気体や水噴霧を溶融金属に衝突させて微粒化、冷却して製造する。このとき、個々の金属微粒子は1回しか分裂しないため、極めてエネルギー効率が低い。この課題を解決するために、本研究では、近年明らかにされた、液滴が繰り返し分裂する連鎖分裂現象を、微粒子製造に応用することで、高効率な微粒子製造技術を実現することを目指す。しかしながら、連鎖分裂現象には不明な点が多い。そこで『液体金属が連鎖的に分裂する条件を特定することで、革新的な微粒子製造技術への適用性を評価すること』を目的に研究を実施している。 初年度は、連鎖分裂を起こす条件を特定するために、飛散しながら分裂する金属微粒子の挙動を、高速度カメラを用いて詳細に観察するとともに、非接触温度計測法である二色温度法を適用することで、定量的な温度計測に成功した。鉄(炭素鋼)を供試金属とした場合、金属微粒子の温度は空気中の酸素との発熱反応によって温度上昇し、やがて固体から液体へと融解して、最高温度は2000Kに達する。熱収支を理論的に検討したところ、発熱量と周囲への熱伝達量、輻射量などのバランスが定量的に明らかになった。また、連鎖分裂を起こすタイミングで、金属微粒子の温度が大きく上下することが分かった。 続いて、飛散する金属微粒子を採取し、走査型電子顕微鏡を用いて微視的視点からも詳しく可視化計測を行った。その結果、多くの供試金属について、微粒子の径や分裂を駆動する内部の気泡径を計測することに成功した。以上の得られた結果をまとめて、金属微粒子の連鎖分裂が起きる条件として、金属微粒子内部への酸素の分子拡散速度が重要である可能性が示唆された。 初年度に得られた研究成果の一部は、英文学術誌と学会発表を通じて公開されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では、高速度カメラを用いた可視化と温度計測が初年度の目標であった。実際には、それらに加えて、走査型電子顕微鏡を使用した微視的な微粒子計測にも成功し、有益な知見を得られたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、当初の計画に沿って研究を推進する。具体的に、金属微粒子内部に発生する気体種を特定することを目指して、熱分析試験を試みる。あわせて、エネルギー分散型X線分析を実施することで、初年度に得られた連鎖分裂機構の仮説『分子拡散律速説』を実験的に検証する。最終的に、1・2年目に得られた試験結果を総合的に分析し、理論的な検討と合わせて、液滴連鎖分裂現象の微粒子製造技術への適用可能性および課題を明らかにする。
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