積層造形や粉末冶金に用いられる金属微粒子は,従来,高速の気体や水噴霧を溶融金属に衝突させて微粒化,冷却して製造する.このとき,個々の金属微粒子は1回しか分裂しないため,極めてエネルギー効率が低い.この課題を解決するために,本研究では,液滴が繰り返し分裂する連鎖分裂現象を,微粒子製造に応用し,高効率な微粒子製造技術を実現することを目指す.そこで『液体金属が連鎖的に分裂する条件を特定することで,革新的な微粒子製造技術への適用性を評価すること』を目的に研究を実施した. 初年度は,連鎖分裂を起こす条件を特定するために,飛散しながら分裂する金属微粒子の挙動を,高速度カメラを用いて詳細に観察するとともに,非接触温度計測法である二色温度法を適用することで,定量的な温度計測に成功した.鉄(炭素鋼)を供試金属とした場合,金属微粒子の温度は空気中の酸素との発熱反応によって温度上昇し,やがて固体から液体へと融解して,最高温度は2000Kに達する.熱収支を理論的に検討した結果,発熱量と周囲への熱伝達量,輻射量などのバランスが定量的に明らかになった. 2年度は,飛散する金属微粒子を採取し,走査型電子顕微鏡とX線分析を用いて微視的視点からも詳しく可視化計測を行った.その結果,多くの供試金属について,微粒子の径や分裂を駆動する内部の気泡径を計測することに成功した.さらに,高速度可視化と理論解析を組み合わせることで,粒径と連鎖分裂に至るまでの時間を同時に取得する新しい手法を開発し,時定数の議論を可能にした.その結果,液体金属が連鎖的に分裂する条件として,微粒子内部の拡散現象と内部の気泡発生が不可欠であることを明らかにし,微粒子製造技術への展開には,粒子の高温状態を保持することで凝縮相反応を持続させることが重要であることを示した. 本研究で得られた成果は,英文学術誌と学会発表を通じて公開されている.
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