研究課題
本研究では、バルク流体力学が適用不可能なナノスケールでの流体挙動を、プローブナノ粒子を用いてその場でリアルタイムに観測する。これにより、これまで観測が困難であったナノ空間中の流体挙動を実験的に明らかにする事を目的とする。具体的には、蛍光ダイヤモンドナノ粒子と金ナノ粒子をガラスナノ構造中(ナノ細孔)に脂質二重膜でシールして閉じ込める。金ナノ粒子を光学加熱して閉鎖ナノ空間に強制対流を生じさせ、ナノ粒子の回転および並進ブラウン運動の変化を同時観察する。これを自由空間中でのブラウン運動と比較し、ナノ空間中での流体力学挙動を解析する。H31(R1)年度は、(1)蛍光ダイヤモンドナノ粒子の光検出磁気共鳴(ODMR)の温度特性詳細解析と(2)脂質二重膜によるナノ細孔シール技術および光学特性観察技術の構築を行った。(1)では、金ナノ粒子加熱時に熱が発生し、その熱(温度)によってODMRのスペクトルプロファイルが変化する可能性があり、それを定量的に評価した。その結果、温度によってスペクトル形状に100分の1弱の歪みが発生することを見出した。本研究のブラウン運動検出では数十ナノメートルの大きさのダイヤモンドナノ粒子を使用するために、この歪みによる影響は問題ないと結論できた。(論文投稿予定)また、回転ブラウン運動と並進ブラウン運動を同時に観察するため、ワイドフィールド蛍光観察での磁気共鳴観察が可能となった。他にも、近赤外レーザー照射時のODMRコントラスト変化を定量することで、ブラウン運動計測に影響のないレベルの近赤外レーザー強度を決定する事に成功した。また大阪府立大学では、チャンバー試作を実施しているほか、所望する波長帯域の光を共振させる構造について明らかにすることができた。
2: おおむね順調に進展している
本年度目標とした、蛍光ナノダイヤモンドの光検出磁気共鳴特性の精密評価を完了することができた。また、共焦点顕微鏡による観察だけでなく、ワイドフィールド蛍光観察でも光検出磁気共鳴を測定可能となった。近赤外レーザーの導入に関しても順調に完了している。
次年度は、ナノ細孔フォトニック結晶への蛍光ナノダイヤモンド導入を行い、そのスピン共鳴観察に挑戦する。そのために、多数のナノ細孔で光検出磁気共鳴を一様に観察するための均一マイクロ波照射アンテナの作成も行う。また光検出磁気共鳴スペクトルのスペクトル形状に関して、ナノ粒子内のスピン均一性などを考慮したより詳細なモデル化を行う。ナノ細孔フォトニック結晶に関しても、細孔内のダイヤモンドから発光される蛍光強度やスペクトル特性がどのように影響を受けるか?などの点に関して、定量的な実験データを蓄積し、回転ブラウン運動に関するデータを定量的に議論する。
本年度はピエゾステージを購入する予定であったが、サンプルスキャニング型よりもレーザースキャン型の顕微鏡系にする事が望ましいことが判明したために、購入を見送った。レーザースキャニングに関連する装置を次年度導入予定である。また、年度後半に国内・国際学会への参加を予定していたが、COVID-19のためキャンセルとなったため。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (22件) (うち国際学会 11件、 招待講演 1件) 備考 (3件)
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