研究課題
本研究では、バルク流体力学が適用不可能なナノスケールでの流体挙動を、プローブナノ粒子を用いてその場でリアルタイムに観測する。これにより、これまで観測が困難であったナノ空間中の流体挙動を実験的に明らかにする事を目的とする。具体的には、蛍光ダイヤモンドナノ粒子と金ナノ粒子をガラスナノ構造中(ナノ細孔)に脂質二重膜でシールして閉じ込める。金ナノ粒子を光学加熱して閉鎖ナノ空間に強制対流を生じさせ、ナノ粒子の回転および並進ブラウン運動の変化を同時観察する。これを自由空間中でのブラウン運動と比較し、ナノ空間中での流体力学挙動を解析する。R2 年度は、(1)多数のナノ細孔で光検出磁気共鳴(ODMR)を一様に観察するための均一マイクロ波照射アンテナの作成と、(2)レーザー照射時にナノダイヤモンド温度計がアーティファクトを発生させる原因解明を行なった。(3)さらに、ナノ細孔とマイクロ波アンテナ構造のチップ上集積化も検討した。(1)では、スプリットリング共振器型と修正コプレーナ型のアンテナ形状を設計し、ガラス基板上にフォトリソグラフィを用いて作成した。シミュレーションと実際のODMR測定によるデータから、数平方ミリメートルの領域でODMRを測定する事が可能となった。(2)については、温度測定アーティファクトの原因が光強度依存のODMRスペクトル形状変化である事を見出した。特に、ODMR中心周波数が光強度によって変化する現象は世界で初めての報告となり、Phys. Rev. Research誌に掲載された。本研究によるレーザー加熱時にもアーティファクトになり得るものであり、その相殺方法も確立した。(3)においては、ナノインプリント技術を用いて集積化する方向で設計の詳細をつめた。
3: やや遅れている
コロナ禍の影響で特に代表者/分担者間の共同作業テーマ(ナノ細孔でのダイヤモンド検出)が遅延している。
次年度は、ナノ細孔フォトニック結晶への蛍光ナノダイヤモンド導入を行い、そのスピン共鳴観察に挑戦する。そのために、ナノ細孔とマイクロ波アンテナの一体集積化デバイスの作成やナノダイヤモンド・金ナノ粒子の同時ナノ細孔導入を中心に行う。
コロナ禍のためナノ細孔へのナノ粒子導入実験が十分に行えなかったため、繰越が生じた。次年度において、ナノ細孔への粒子導入実験を行うため予算を使用する。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 3件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 図書 (1件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件) (うち外国 1件)
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