研究課題/領域番号 |
19K21939
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
多田隈 建二郎 東北大学, タフ・サイバーフィジカルAI研究センター, 准教授 (30508833)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | 織布構造 / ロボット機構 / 機構設計 |
研究実績の概要 |
従来の袋状構造方式は,袋部の表面が破けると剛性切替が不可能になるという根本的な問題があった.本研究で提案する「織布メカニズム」は,自由曲面状で柔らかさと硬さを切り替えることの可能なシート状の構造を創出することを目的とする.この構造を生み出すための手段として,従来,当研究チームが取り組んできた柔剛切替機構の1つである1次元ジャミング転移機構を「線」の単位的な構造だとみなし,それを複数束ねて,布状に「編む」ことによって,上記の織布構造を実現していくという方法を取る.本織布構造は,従来の表面破損後の柔剛切替え機能の維持を根本から解決するものとなりうる.また,従来極めて困難であった脆弱・軟弱対象物への受動的な包み込み保持を実現可能な革新的な構造となり,裁縫という一定に確立された手段を機構学にまで応用・展開することで,体系だてを意識した学術発展となりうる非常に意義の高いものである. 初年度においては,まずこの線状の単位構造を複数用いることで,シート状の構造が実際に実機として実現できるかどうかという根本課題に挑戦した.その際,最も基本的な縦糸・横糸の組み合わせによりシート状を構成する方式を採用した.縦糸を柔剛切り替え可能な線状構造で構成し,横糸を柔軟細糸とすることで,シート状の構造を構築することができることを確認した.また自由湾曲面において全体としてシートの柔らかさ・硬さの変化を起こすことが可能であることを実機を用いた基本実験を通して確認した.横糸にも柔剛切替え可能な線状構造を用いることが次なる課題となるが,これには縦糸と接触する部品の構造について可動性もたせるようにするという解決のための道筋も,実機実験を通して明確にすることができた.また各構造構成法と,応答性・形状分解能などの特性とを結びつけた体系化のための項目設定も,初期実機の開発を通して確認することができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
挑戦的な根本課題である織布構造を構築することができるかどうかということに対して,設計のみならず,縦糸を柔剛切り替え可能な線状構造で構成し,横糸を柔軟細糸として試作機を具現化したことは進捗と言える.さらに,実機の試作にとどまらず,実機を用いて実験により,自由湾曲面において全体としてシートの柔らかさ・硬さの変化を起こすことが可能であるという基礎特性も確認した.これらの織布構造の基本特性の知見を次なる新しい織布構想につなげていく予定である.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,縦糸のみならず,横糸においても柔剛切り替え構造を適用させるにはどうするか,また適用が成功した後の全体の織布構造にはどのような特性があるのかを実機具現化および実機実験を通して明らかにする.これらの織布構造の基本特性の知見を次なる新しい織布構想につなげていく予定である.さらに,これらの裁縫技術からの切り口も導入することで,縦糸・横糸のみならず,線状の構造で織布メカニズムを全体として構成可能な編み方についても検討・具現化を試みる.
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次年度使用額が生じた理由 |
当年に置いては,織布メカニズムの基礎的な原理を検証することを目的として,その織布の基本となる構造についてアイディアを煮詰めることを最も重要視した.その結果,構成する実機の数も必要最小限のものとしたため,額を極力おさえこんだ.一方,次年度以降においては,試行錯誤というスタイルが入ることを予め見積もっての複数種類の方式の織布メカニズムの実機構成と実験に取り組むことからも,本次年度使用額を使用して取り組んでいく予定である.
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