研究課題/領域番号 |
19K21942
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
太田 裕貴 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (30528435)
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研究分担者 |
上野 和英 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (30637377)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | ストレッチャブルデバイス / 光エレクトロニクス |
研究実績の概要 |
センサ・メモリ基材としてポリジメチルシロキサン(PDMS)を用いた。電極として液体金属 (ガリンスタン) を用い、光反応性を示す機能性液体としてイオン液体、[Azo][NTf2]を用いた。この[Azo][NTf2]は、紫外光と可視光の波長によって分子内の置換基の位置が変化する。その結果、可視光ではトランス体を形成し、紫外光ではシス体を形成するイオン液体である デバイス加工:ガラス基板にフォトレジスト(SU-8)を塗布し、フォトリソグラフィ技術を用いてモールドを作製した。液体状のPDMSを流して、熱硬化させた。また、別のガラス基板上にAZを薄く塗布し、その上にPDMSを薄く塗布し、薄膜PDMSを作製した。硬化させたPDMSと薄膜PDMSを化学結合させることで、デバイス基材を作製した。流路に液体金属、イオン液体の順に注入した。最後にガリンスタンの注入口に導線を挿し、注入口をシリコーンでふさぐことでデバイスを作製した。デバイスの写真および加工方法をFigure 1, 2に示す。メモリの0→1の変換は、デバイスの下部に紫外光(370 nm)と可視光(青)(470 nm)のLEDを切り替えることで行った。その結果として、UV光を10Vで60秒照射、BLUE光を8Vで60秒照射を10回繰り返したときのインピーダンス変化の再現性の確認をした。波長の変化によってインピーダンス値が変化した。波長によってインピーダンスの違いがあり、光が当たっていない状態でインピーダンスを保持しているため、青い光のときを0、紫外光のときを1とするメモリを作製することができる。10回のUV光とBLUE光照射の繰り返しによってインピーダンス値が変わらなかったため、再現性があることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究申請書におけるスケジュールでは単一光メモリの開発までであった。しかしながら実際には光メモリに加えて、光センサを実現している。また、単一の光メモリから、複数ビットの光メモリをも実現している。また、温度・湿度の単独のセンサに関してはもうすでに実現をしており、本年度の課題に関して十分な要素技術の準備が行えている。以上の理由から、予想以上の研究進捗を示せていると判断することができる。
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今後の研究の推進方策 |
現在、予定よりも大幅な進捗を得られている。1ビットや数個のメモリ機能に関しては実現しており、今後多数のビットが実装されている1デバイスを作製する。その際に、複数ビット実装されているデバイスが作成されると、LED光のお互いへの干渉が問題になる可能性がある。そのため、3Dプリンタとマイクロ加工を組み合わせた加工を用いて3次元構造を利用することで所望のデバイスを構築する予定である。その0と1のインピータンスの違いに従ってデジタル表示を切り替えることができるシステムを構築する。また、現在でもメモリ機能を実証しているが変化率が小さいためその変化率が少しでも多くなるような材料的な改善を行う必要があると考えられる。更に、更なる高感度な光センシングが実現できるような材料の選定を行う。高感度な光センシングを実現することによって、今までに作成した温度・湿度センサを並列化することによって、温度・湿度・光の環境パラメータを別々に認識できるセンサを開発できると考えている。本研究では光センサに関する開発しか提案できていないが、光センサを完成させることが出来たら、これら他のパラメータも同時計測できるようなデバイス設計を行う。これを実現するためには互いのセンサによる干渉を防ぐ必要がある。その際には最適な信号処理設計を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度は物品費はほぼ予定通りの支出であり、大きな差異が出たのは旅費である。これは新型コロナの影響で国際学会などをキャンセルせざるを得ない状況になってしまったためである。研究進捗自体は予想を上回るペースで進んでおり、2019年度で使用しなかった資金は更に研究を発展させるための消耗品及び学会発表で使用する。
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