本研究では,生体内で供給可能なグルコースと酸素を燃料とするバイオ燃料電池と,その電位差に伴い発生する電気浸透流反力による自己電気浸透推進機構と,外部磁場による操舵制御機能とを統合した,新規マイクロ泳動ロボットを提案し,マイクロロボットの位置制御システムを実現する事に挑戦する.計画していた課題項目は下記(1)~(4)である. (1)磁性を備えた自己推進マイクロロボットの設計・製作:製造プロセスを確立し,マイクロロボットの設計・製作を実施する.(2)磁場操舵制御システムの設計・構築:液体環境下でマイクロロボットを実時間で観察し,位置制御するシステムを設計・構築する.(3)模擬生態環境下での推進速度評価:構築した制御システムを用いて生体環境を模擬した条件で位置制御評価を行い,生体応用への課題を抽出する.(4).研究総括・まとめ 2020年度は主に上記課題項目(2)~(4)を実施した.(2)磁場操舵制御システムの設計・構築:前年度から引き続き,任意方向に均一磁場を生成するヘルムホルツコイル,顕微鏡・画像分析システムからなる磁場操舵制御システムを構築した.特に,高電流の安全対策を行い,コイルの発熱に実験場の問題が無いことを確認した.(3)模擬生態環境下での推進速度評価:生体環境を模擬した条件で駆動評価を行った.グルコース溶液中で,マイクロロボットの運動を実現し,磁場制御系による操作可能性を確認した.ウシなどの血液を用いた実験評価は今後の課題である.また,本マイクロロボット構造の派生技術としてフィルム状マイクロポンプを考案し,プロトタイプを用いてグルコース溶液に浸すだけで面状の流れを生成可能であることを実証した.このフィルム状マイクロポンプのバイオ燃料電池としての起電力計測を行い,生体応用のために必要な長時間駆動のための知見を得た.(4)研究総括・まとめを行った.
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