研究課題/領域番号 |
19K21947
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
三木 則尚 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (70383982)
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研究分担者 |
古川 聖 東京藝術大学, 美術学部, 教授 (40323761)
寺澤 洋子 筑波大学, 図書館情報メディア系, 准教授 (70579094)
皆川 泰代 慶應義塾大学, 文学部(日吉), 教授 (90521732)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | 同期脳 / 協働 / 双方向脳神経科学 / インタラクション / 脳波音楽 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、人と人との協働において生起される同期脳活動の、機序解明から協働場設計・評価への応用までを網羅する双方向脳神経科学(interactive neuroscience)という新奇学術分野の開拓である。そのために、脳活動計測を支援するICT、マイクロ・ナノ工学の専門家と、認知神経科学、心理学の専門家、さらには音楽、アートを通じた協働場の創成を行うメディアアート、実験音楽の専門家からなるユニークな研究グループを構成した。 2019年度の目標は、超低負荷な脳活動計測システムの構築ならびに同期脳活動機序の解明、音楽場における協働評価であった。まず、脳波を、活動中の対象者から、超低負荷に、かつ高いSN比で計測できるシステムを構築すべく、帽子型の電極保持機構ならびにキャンドル型脳波電極の開発を行った。特に脳波電極の電極密度を最適化することで、髪の毛の影響を最小限に抑え、かつ接触インピーダンスを低減することに成功した。また、脳波ならびにfNIRSによる血動態を計測しながらの協調作業(家具配置ゲーム)、心拍をその速度を調整しながら手首にフィードバックすることによる心理状態の制御実験を行い、協働作業における生理情報取得を行った。十分なデータが取得でき現在解析中であり、同期脳インデックスへの抽出につながると考えている。 また上記協調タスク場に加え、音楽場ならびに学習教育場での協働場評価に向けて、実験条件の検討を行った。2020年度における実験準備ができている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度の目標は超低負荷な脳活動計測システムの構築ならびに同期脳活動機序の解明、音楽場における協働評価であった。まず、研究代表者(三木)は、脳波を、活動中の対象者から、超低負荷に、かつ高いSN比で計測できるシステムを構築すべく、帽子型の電極保持機構ならびにキャンドル型脳波電極の開発を行った。特に脳波電極の電極密度を最適化することで、髪の毛の影響を最小限に抑え、かつ接触インピーダンスを低減することに成功した。これらを国際学会(EMBC 2019)ならびに国内学会(第10回マイクロ・ナノ工学シンポジウム)において発表した。 また、三木と研究分担者(皆川)が共同で、脳波ならびにfNIRSによる血動態を計測しながらの協調作業(家具配置ゲーム)、心拍をその速度を調整しながら手首にフィードバックすることによる心理状態の制御実験を行い、協働作業における生理情報取得を行った。その成果を国際学会(SICE 2019)ならびに国内学会(第10回マイクロ・ナノ工学シンポジウム)において発表した。十分なデータが取得でき現在解析中であり、同期脳インデックスへの抽出につながると考えている。皆川は協調における脳活動について、国際学会(NIR2019)ならびに国内学会において招待講演を行っており、また研究成果を国際学会(NIR 2019)ならびに国内学会(光脳機能イメージング学会第22回学術集会、LSDCOMシンポジウム)において発表した。音楽場での協働場評価における脳波計測について、研究分担者(古川、寺澤)と三木で検討を行い、その成果を国内学会(JSSA第41回研究会)において発表を行った。 以上のように十分な成果が挙げられており、進捗はおおむね順調であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度の研究で得られた知見に基づき、引き続き、低負荷脳波計測システムの開発、計測した脳活動情報からの同期脳インデックス抽出、およびこのインデックスを用いた協働場、すなわち音楽場、協調ゲーム、教育の場の評価を行う。 本研究は、脳活動の計測・応用という工学、同期脳の機序を明らかにせんとする認知神経科学ならびに心理学、そして場の創成をもくろむメディアアート、実験音楽という、全く異なる領域の研究者が結集し、脳の同期現象を評価指標として、複数参加者による協働場の評価と創成に挑戦する。個人のfMRI大規模データ収集に始終してきた海外では類を見ない、双方向脳神経科学(Interactive Neuroscience)と呼ぶべき新しい脳科学研究を世界に先駆けて開拓することを究極的な目標としている。実験で得られた結果を体系化し、新たな研究ドメインを開拓する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度は旅費として900,000円計上していたが、参加した学会が少なかったため、差額が生じた。一方で、人件費・謝金、ならびにその他においては計画よりも多く出費することになった。結果として120,203円の次年度使用額が生じた。これは、2020年度、協働場評価実験のための物品費に使用する。
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