研究課題/領域番号 |
19K21952
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
遠藤 恭 東北大学, 工学研究科, 准教授 (50335379)
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研究分担者 |
宮崎 孝道 東北大学, 工学研究科, 技術専門職員 (20422090)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | アモルファス金属磁性微粒子 / 電源用磁心材料 / サブミクロンサイズ / 高周波磁気特性 / 配列化 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、次世代電源用磁心材料の創製を目指して、サブミクロンサイズのアモルファス金属磁性微粒子材の合成および静的・動的磁気挙動の検討と、合成した金属微粒子と樹脂とを組み合わせて配列化を試み、それらの形状と静的・動的磁気挙動の検討を行う。本年度の実績は以下の通りである。 磁性金属として比較的飽和磁化の高いFe-B合金を選択し、水溶液還元法による合成を試みた。合成した微粒子の形状はすべて球状であり、それらの平均粒径は合成条件を変化させることにより300~750 nmのサブミクロン範囲で可変させることができた。合成した微粒子の結晶構造はTEM像およびXRDパターンからアモルファス状態となっていることを確認した。合成した微粒子の静的磁気挙動に関しては、平均粒径に関係なく保磁力が数Oe程度、残留磁化比が低く、ヒステリシス損が抑制できているものと考えらえる。また、動的磁気挙動に関しては、いずれの平均粒径においても強磁性共鳴(FMR)周波数が数GHz程度、線幅がブロードとなった。 次に、ポリミド基板上に樹脂を用いてペースト化したサブミクロンサイズのFe-B微粒子コンポジット材を、数kOe のDC磁界を発生させた電磁石の磁極内で配列化させ、その後オーブンで固化を試みた。合成したコンポジット材の配列形状に関しては、SEMによる断面形状観察を行ったところ、一部を除いておおむね数珠上に一方向に配列できていることを確認した。この一方向の配列は、隣接微粒子間に静磁気的相互作用が働いたことによるものと考えらえる。このように配列化したコンポジット材の磁気挙動に関しては、DC磁界の印加方向によって磁化の飽和のし易さが異なった。これは、配列化により磁化容易軸・困難軸が現れたことによると考えられる。また、磁化困難軸方向に交流磁界を励起すると、その比透磁率は配列していない場合に比べて若干高くなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の検討項目は「サブミクロンサイズのアモルファス金属磁性微粒子材の合成および静的・動的磁気挙動」と「合成した金属微粒子と樹脂とを組み合わせて配列化を試み、それらの形状と静的・動的磁気挙動」である。まず、微粒子の合成に関しては、所望の条件(サブミクロン径のアモルファス構造)を最適化でき、その静的・動的磁気挙動に関しても比較的良好な軟磁気・高周波磁気挙動を示すことを確認できた。また、配列方法については、樹脂に対する微粒子の体積充填度が低い状態で静磁気的総合作用により一方向に揃い、配列の方向によって磁気特性が異なることを検証済みである。以上に述べた結果から、本年度の研究計画はおおむね順調に遂行できていると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
サブミクロンアモルファス金属微粒子の合成法に関しては、現時点で合成時の微粒子の収量が低いため、デバイス応用のために収量の増加が必須であり、合成時の添加物について検討する必要がある。また、合成した微粒子と樹脂とを混合させた配列法に関して、樹脂に対する微粒子の充填度が高い場合に,電磁石によるDC磁界印加による配列法が適用可能か否か見極める必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由としては,本研究課題を遂行する中で,低周波帯域において透磁率を正確に同定しておくことが重要であることを理解し,そのための測定系(フェライトヨーク法)を構築する必要が生じたためである。使用計画としては,低周波帯域における透磁率評価装置の構築のために使用する。
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