本研究は発光電気化学セル(LEC)の素子動作機構を分子レベルで解明し、素子高特性化を目指すことを目的とする。電荷ドーピング状態や形成過程等について電子スピン共鳴(ESR)によるオペランド直接観測を行い、従来手法では成し得なかった微視的な観点からLECの動作機構の解明を行う。 本年度は、青色発光材料Hostポリマー、三重項-三重項消滅(TTA)ポリマー、それらのブレンド膜であるMixedポリマーを用いたLEC素子の研究を詳細に行った。HostポリマーLECではp型ドーピング後にn型ドーピングが、TTAポリマーLECではn型ドーピング後にp型ドーピングが進行した。MixedポリマーLECではHostポリマーのp型ドーピングとn型ドーピング、TTAポリマーのn型ドーピングとp型ドーピングの順に電荷ドーピングが進行する過程を明らかにした。電荷ドーピングの同定には、オペランドESR信号のg因子と密度汎関数理論(DFT)計算を用いた。MixedポリマーLECの電荷ドーピング過程は、エネルギー準位図、電極界面におけるプッシュバック効果、HostポリマーとTTAポリマーの混合体積比も考慮して解析を行った。 また、MixedポリマーLECにおける三重項励起子の形成状態や励起子移動機構を、HostポリマーとTTAポリマーの比を変えたMixedポリマーLECの低温ESR測定により解明した。 更に、熱活性化遅延蛍光(TADF)を示す緑色発光材料DACT-II、青色発光材料TpAT-tFFOとHDT-1、赤色発光材料TPA-PZTCNを用いたLECのオペランドESR研究も実施し、それぞれのLECの電荷ドーピング過程の解析や、動作機構の解明を進めた。HDT-1を用いたLECでは、純青色超蛍光材料ν-DABNAも導入して、Hyperfluorescence技術によるLECの色純度向上も確認できた。
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