単層SnSは優れた圧電・強誘電特性が理論的に予想されてきたものの,材料合成の難しさから実験的には未開拓な材料であった.本研究では,マイクロメータサイズかつ高結晶な単層SnSの合成技術を世界に先駆けて開発した.ポイントは,出発試料粉末内の不純物の把握である.XRDによりSn2S3が少量含まれることを確認し,これが基板表面でSリッチな環境になり単層SnSが安定に成長したと考えられる.このSnSの強誘電特性を電気特性から実証した.環境発電への応用研究においてはやっとスタートラインに立てたという段階である.また,MoS2をモデル材料としてフレキシブルデバイスの作製と発電評価を行なったが,予想通り発電パワー密度は100 nW/cm2級にとどまり実用化へは程遠い.しかし,MoS2よりも2桁大きな圧電特性が予想されているSnSを用いることで1 uW/cm2級のパワー密度が望める.さらに,成長中にらせん転位を導入しらせんを描くように成長させることによって,中心対称性を制御した多層SnSの形成が可能であることが明らかになった.実際に,単層膜厚よりも少しだけ低い段差をもつ基板上に成長することによって,1層目が段差を乗り越えてらせん状に成長することが明らかになってきている.この技術はパワー密度の大幅な向上を可能にし,基礎研究にとどまっている2次元圧電・強誘電材料を革新的ウェアラブルIoTなどのデバイス応用へ飛躍させると期待できる.
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