研究課題/領域番号 |
19K21959
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岩本 敏 東京大学, 先端科学技術研究センター, 教授 (40359667)
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研究分担者 |
小林 伸聖 公益財団法人電磁材料研究所, その他部局等, 研究員(移行) (70205475)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | 磁気光学効果 / ナノグラニュラー膜 / 非相反性 / ナノフォトニクス |
研究実績の概要 |
セラミックと微細な磁性グラニュールから成るナノグラニュラー膜は、光通信波長帯において巨大なファラデー効果を示す。本研究では、セラミックスの種類を選択することによって、大きな光透過性と大きなファラデー効果、すなわち、性能指数の優れた膜の開発を目指すとともに、その非相反ナノフォトニクスへの応用を目指す。 本年度は、まず高い光透過性が期待できるフッ化物系について検討した。その結果、BaF2を用いたFeCoナノグラニュラー膜において、これまで検討してきたAlF3と比較して高い性能指数が得られることがわかった。FeCo-BaF膜の性能指数の向上は、膜中においてAlF3はアモルファス状態であるのに対し、BaF2は結晶構造を有することから、結晶性に由来すると考えられる。 また、ナノフォトニクスに利用するためには、フッ化物よりも高い屈折率を有するセラミック母材を望まれることを踏まえ、窒化物を母材としたナノグラニュラー膜の作製と磁気光学効果の観測に成功した。さらに、その光導波路デバイスへの応用に向けて、窒化物系導波路の設計を行った。今後の導波損失評価用のリブ型、リッジ型導波路に加えて、シリコン細線導波路に設けたスロット部分に窒化物を堆積した導波路構造も検討した。この構造では、窒化物部分の電界強度が増強され、窒化物ナノグラニュラー膜と導波モードの相互作用を増強できる可能性があることがわかった。また、非相反導波路として機能する導波路構造についても基礎的検討をすすめ、TEモードに対して機能すると期待できる構造を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ナノグラニュラー膜において、新たにFeCo-BaF膜において性能指数が向上することを明らかにすることができた。この結果は、膜中のセラミックスの構造を最適化により、更なる特性改善の可能性を示す重要な成果である。また窒化物ナノグラニュラー膜の実現に成功するとともに、そのナノフォトニクス応用のための導波路構造に関する基本的設計が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に得られた結果を基に、ナノグラニュラー膜の組成および作製条件、熱処理条件などと、薄膜試料の構造および諸特性の関係を整理し、さらに高い磁気光学特性、性能指数を有するナノグラニュラー膜合成のための方針の確立を目指す。その知見を窒化物や酸化物にも拡大し、ナノフォトニクス応用に向けた高品質ナノグラニュラー膜の実現を目指す。 また、電磁界計算を用いたデバイス設計と非相反デバイスとしての特性解析、デバイス作製プロセス開発などを進め、ナノグラニュラー膜を用いた非相反ナノフォトニクスデバイスの実現を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
デバイス応用の可能性をまず明らかにすることが重要であったために、プロセス技術の開発の開始時期を変更し、導波路の基本設計などを重点的に進めた。そのため、実験用消耗品などの使用量が当初見込みより減少した結果、次年度使用額が発生した。次年度使用額については翌年度請求分とあわせて、プロセスおよび光学実験に関わる消耗品およびプロセスに必要となるクリーンルーム設備の使用料などに使用する予定である。
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