研究課題/領域番号 |
19K21963
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
生田 昂 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80805929)
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研究分担者 |
正井 宏 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (70793149)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | グラフェン / ポリマーネットワーク / 相転移 / 電界変調素子 |
研究実績の概要 |
本研究では、ポリマーネットワーク材料の相転移現象とグラフェン電界効果トランジスタ(FET)を融合した新奇センサデバイスを創成することを目的としている。従来型のグラフェンデバイスの微小応答限界を打開すべく、微小刺激をポリマーネットワークの転移現象で増幅し、グラフェンで検出する2段階原理を採用したデバイスの開発を行う。 初年度は、ゲルの下限臨界相溶温度(LCST)型転移に注目した電界変調デバイスの作製及び動作実証を行った。ポリN-イソプロピルアクリルアミド(PNIPAM)に代表される感熱性高分子ゲルは閾値温度を境に疎水性相互作用によって劇的に凝集する転移現象を示す。その際にゲル内部に保持している溶媒を放出する性質がある。この性質を利用しゲート絶縁膜の実効的な厚みを変調し、デバイスにおけるゲートキャパシタンスの変調による巨大電界効果変調デバイスの動作原理実証を行った。グラフェンFET上にLCSTゲルを配置し、LCSTゲルの温度に対する固相-液相相転移現象をゲートキャパシタンスの変化として読み取り可能な構造を作製した。このデバイスに対し、温度に対するゲートキャパシタンスの変化を測定すると転移温度以下では、実効的なゲート電圧がほとんど印加できなかったのに対し、転移以上では、実効的なゲート電圧の印加を行うことができグラフェン特有の両極性伝導を観測することができた。また、転移温度前後でのゲートキャパシタンスの変化を測定すると、ゲートキャパシタンスが相転移前後で25倍程度変化していることが分かった。このことから、本研究の目的としていた、ポリマーネットワークにおける相転移現象を利用した巨大電界効果変調素子の実証に成功したいえる。 以上のように、本研究ではポリマーネットワークの相転移現象とグラフェンFETを用いた巨大電界変調効果デバイスの開発に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究業績に記載の通り、本研究の目的としていた相転移現象とグラフェンFETを相補的に利用した、巨大電界効果変調デバイスの作製および実証に成功しており、研究の進捗状況は順調である。
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今後の研究の推進方策 |
初年度ではLCST型の相転移に注目し、巨大電界効果変調素子のデバイス動作の概念実証を行い、それに成功してきた。今後はこの動作原理を更に発展させ、ポリマーネットワークにおける他の相転移現象を利用した素子の開発を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に予定をしていた物品購入や学会参加がコロナウイルスまん延のため中止または延期になったため次年度への繰越金が発生した。 来年度は、既に得られた成果の発表や延期になっていた物品購入を行う予定である。
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