再生可能エネルギーの大量導入に伴い,蓄電装置を含めた直流電力の利用拡大が急務である。直流は交流と異なり電流ゼロ点がなく遮断が困難であるが,機械接点と半導体パワーデバイスを組み合わせたハイブリッド直流遮断器では比較的容易に直流電流の遮断が可能である。また半導体のみで構成した遮断器と比較して定常時損失が圧倒的に低い特徴がある。ただし機械接点開極時に接点間に短時間アークが発生するため,接点損耗による短寿命化や,電磁ノイズの発生が課題である。 本研究はハイブリッド遮断器においてアーク発生のないアークフリー技術を開発することを目的とした。機械接点間を流れる電流は均一に分布せずに局所的な通電点,すなわちマイクロドットを流れる。局所部分の温度上昇によって接点金属は溶融してブリッジが形成され,さらに沸騰してアークとなる。このためアーク発生前に機械接点から半導体に直流電流を転流させて,半導体で電流遮断することでアークフリー遮断が実現できる。申請者らは沸騰温度の高いタングステンを銅基材上に分散配置する構成を提案し,通電点の温度上昇を防ぎアーク発生の電流限界を高めることを目標とした。シミュレーションで分散配置による熱放散効果を評価した結果,無分割のアークフリー転流は450Aであるが,4分割すると800Aまで増加することがわかった。実際に無分割,2,4分割接点を製作して試験した結果,アークフリー電流は400A以下で分割前後で変わらなかった。これは分割した接点に均等に電流を配分するように接点間距離を保ち,溶融状態の通電点を制御することは困難であることによる。このためこの制限を超える方法として,銅・銅炭素・炭素の3層構造からなる可変抵抗接点を開発した。アークフリー限界電流の増加確認には至らなかったが,接点材料の溶融電圧による制限を受けない接点構造として利用可能であることを見いだした。
|