研究実績の概要 |
Switched Reluctance Motor(SRM)の欠点であるトルクリプル,入力電流リプル,騒音の3つをゼロにする,すなわちトリプルゼロを実現する方法を検討した。 近年,ワイドギャップ半導体(SiCやGaN)を用いたスイッチングデバイスの高周波化に伴い,駆動電流の波形制御によりトルクリプル,入力電流リプル,騒音を低減する手法が盛んに研究されている。しかし,3相SRMにおいて,トリプルゼロを達成しようとすると,正トルク領域だけでは制御的自由度が足りないため,負トルク領域に積極的に電流を流す必要があり,銅損が極端に増加し,実用的でないほど効率が悪化するという問題があった。そこで,5相SRMにより自由度を拡大し,高効率を保ちつつ,トリプルゼロを達成する手法を提案した。 昨年度行った3相SRMの実験を拡張し,今年度は新たに製作した5相SRMを用いて,提案した高効率を保ちつつトリプルゼロを達成する理想電流の効果を実機により確認した。なお,トルクリプルは高応答のトルクメータ(UTMⅡ-10Nm, 帯域1kHz, UNIPULSE),振動は加速度センサ(NP-3120, 帯域50kHz, 小野測器)により測定した。実機検証の結果,理想電流を5相SRMに適用することで,通常用いられる駆動法と比較して,トルクリプルを93.5%,振動を-24.8%,入力電流リプルを95.9%低減することを確認した。加えて,3相SRMでは理想電流の代償に銅損が62.8%増加するのに対して,5相SRMでは銅損の増加を1.6%に抑えられることが分かった。これらのことから,実機においても,5相SRMによる制御的自由度の拡大により,効率を維持しつつも,SRMの欠点であるトルクリプル,入力電流リプル,騒音の3つを大幅に改善できることを確認した。これらの研究成果は,世界トップレベルの学会であるIEEE Energy Conversion Congress & Expoにて発表を行った。加えて,電力変換分野で高い影響力のある IEEE Transaction on Industrial Applicationにも投稿した。
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