研究実績の概要 |
寝室等の目的に応じた住環境の照明のデザインに向けて、従来は個人の印象をアンケート的に取りまとめる方法が多く用いられてきた。本研究は、特定の光を浴びた際の影響を科学的な方法で解析し、それをもとにするデザイン手法の確立を目指すものである。以下に研究の実績を記す。 1. 光源として、これまでの研究に基づいて半値幅の狭いものを用いることを基本方針とした。これに用いるLED光源を準備し、その電気的特性や発光特性に関する基本データを採取した。 2. 照明デザインの対象として寝室等のリラックス空間を取り上げることとした。また青色照明の考察を行うこととした。青色光は網膜のipRGCに受容され最終的にメラトニンの分泌を抑制し、覚醒度を高める働きが知られている。一方で、航空機内の夜間照明では弱い青色照明が用いられている場合があり、心理的にも青色が空や海を連想させてリラックス感につながるという仮説を立てた。 3. 健康な大学生19名に対して, 青色、緑色光、赤色光を照射し、萩原らが開発したα波減衰試験(BME: bio medical eng. 11, 87-92, (1997))を用いて、その前後のα波の平均パワーを比較し、覚醒度の変化量を求めた。その結果、覚醒度の変化量は各波長について統計的有意差は認められなかった。しかしながら、深い睡眠ステージに達するまでの時間について検証することがあわせて必要であり、これが今後の課題とされた。 4. 健康な男女11名に対して、青色光および緑色光の照射に伴うα波を含む脳波データをリトルソフトウェア社が提供するアルゴリズムにより解析し、感性変化について調べた。その結果、光照射の実験中に入眠する被験者もあり、ラッセル円環モデルにおいてリラックス度の増加が見られた。統計的が可能な実験に至らなかったが、青色照明が覚醒をもたらすようなネガティブな結果は得られていない。
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