本研究では,身体が発現する運動(特にロコモーション)の制御にあたり,身体の形状に依存したテイラーメイドの制御則を設計するのでなく,モジュラー化さ れた制御則を身体にあまねく埋め込むことで,形態に固有の運動を自発的に生じるメカニズム(モルフォフリー制御)に着目している.2021年度は,主に以下の三点について成果が得られた.(1)実在生物であるウマの走行運動において,脚先の反力バランスに基づいて頭頸部を調整する制御則を加えることで,高効率かつ速度に適応した歩容が発現することを明らかにした.(2) 実在の生物にはみられない三放射相称の構造をもつ三叉ヘビロボットに対し,位相振動子モデルと感覚(反力)フィードバックからなる分散型フィードバック制御器を各能動関節に適用した.車輪にかかる横拘束力が大きくなるように位相変化速度を増減する制御則を実装した.その結果,各脚の制御則は身体全体の情報も,他の脚の情報も全く用いない自律分散制御則であるにもかかわらず,回転ロコモーションのパターンが自己組織化的に,かつ即時に得られるという興味深い結果を得た.(3) 可能な限り先入観を拝して身体形態の自由な可能性を探求するため,身体形態によらない自律分散制御則をランダムに生成した身体と組み合わせた場合に,どのようなロコモーションが創発するかを確率的なアプローチによって解析することを試みた.その結果,分散制御則間の接続構造を表すグラフの特性(結合密度や吸引/反発結合の比)と,生じるロコモーションの定性的性質(直進ロコモーション,回転,不規則運動など)との間に一定の傾向が見いだされた.
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