研究課題/領域番号 |
19K21976
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
佐道 泰造 九州大学, システム情報科学研究院, 准教授 (20274491)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | トランジスタ / 結晶成長 |
研究実績の概要 |
トランジスタの微細化による集積回路の性能向上が物理的限界に直面しつつある。さらなる集積回路の性能向上には、新しい手法を採用し、トランジスタを高性能化する事が必須である。本研究では、絶縁膜上に形成したGeSnをチャネルとした高性能トランジスタの実現を目指し、縁膜上にGeSnを高品位形成する新しい結晶成長技術、良好なデバイス動作を可能とする為の不純物ドーピング技術等を創出することを目的として、3年計画で研究を推進する。 今年度は、3年計画の第2年度として、下記の成果を得た。 (1) 第1年度に見いだした基板界面エネルギー変調による固相成長GeSnのキャリア移動度向上の機構を検討し、界面エネルギーを変調すると界面核発生が抑制され、バルク核発生が支配的になること、バルク核に起因する結晶粒界ではキャリアに対するポテンシャル障壁が低下することを明らかにした。界面エネルギー変調の効果は、GeSn膜厚の減少につれ顕著化するため、特に薄膜化が要求される次世代デバイスの高性能化に有用な結果である。 (2) Ge系薄膜への高濃度ドーピング手法として、V族元素等を触媒として用いる新しい結晶成長プロセスの検討を行った。本手法をGeに適用して得られた成長Ge層中の自由電子密度はV族元素の熱平衡固溶度に比べて著しく高いが、GeにSnを添加することで自由電子密度はさらに向上することを見いだした。Geに比べて原子半径の大きなSnの導入により結晶格子が拡大し、原子半径の大きなV族元素の添加に伴う格子歪みの発生が緩和されることに起因すると考えられる。次年度も引き続き、その詳細の解明を目指し、実験を推進する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
綿密な実験計画を立案して研究を推進しており、概ね、順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
現在までに見いだした界面エネルギー変調によるキャリア移動度の向上と触媒成長による高濃度ドーピングに関して、その機構解明等に関するする研究を推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
再現性の高い実験を行うため、当初、コストのかかる大面積試料を多数用いることを計画していたが、実験を推進する過程で試料作製プロセスにおけるバラツキを抑制する指針が見いだされ、安価な小面積の試料を用いても再現性の高い実験が行えるようになったため、材料費の使用額が減少した。また、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、学会へ参加するための旅費が不要となった。これらの理由により、次年度への繰り越しが発生した。次年度は、この繰り越し金も有効に活用し研究を推進する。
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