2020年度は河川水中の大腸菌の簡易、迅速、低コスト分析に成功した。河川水1Lを孔径0.45μmのメンブランフィルターでろ過した。6ウェルマイクロプレートの各ウェルに大腸菌用の寒天培地を作成した。寒天培地には大腸菌用の特定酵素蛍光基質である4-Methylumbelliferyl-β-D-glucuronide(MUG)を添加した。1ウェルにろ過後のメンブランフィルター1枚を載せた。マイクロプレートを37℃に設定したマイクロプレートリーダーにセットし、10分毎にウェルの蛍光強度を分析しながら24時間培養する。蒸留水では蛍光強度は増加しなかった。フィルター当たり大腸菌数40cfuのウェルでは7時間程度で,4cfuのウェルでは13時間程度で蛍光強度が指数関数的に増大した。蛍光強度の増大はウェル内で大腸菌が対数増殖したためと考えられる。サンプルの蛍光強度が閾値を超えた時間を「対数増殖開始時間」と称する。閾値はブランクの蛍光強度の平均値にその標準偏差の10倍を足した値と定義した。同様の分析を繰り返し、公定法で求めた大腸菌数と対数増殖開始時間の関係を解析した。公定法で大腸菌が検出されなかった15サンプルのうち、13サンプルは蛍光が閾値を超えなかったが、残り2サンプルは17.4時間と23.7時間に閾値を超えた。この理由として、本技術の結果が偽陽性であった、または本技術の方が公定法よりも感度が良いことが考えられる。公定法で大腸菌が検出されたサンプルは4つで,大腸菌数の増大に伴い対数増殖開始時間は短くなった。これらは指数関数で近似できた。相関関数はY=15.6 exp(-0.019x),決定係数は0.99であった。以上の結果から、この相関関数を検量線として用いることで、4cfu/Lという低濃度の大腸菌をも定量できることがわかった。
|