研究課題/領域番号 |
19K21980
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
松下 拓 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (30283401)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | 土木環境システム / 膜ファウリング / 同位体ラベリング |
研究実績の概要 |
本研究は、(1) 微生物のエサとして与えるグルコースを同位体ラベリングすることにより(13C-グルコース)、それを微生物が代謝することにより生成される細胞外高分子有機物が同位体ラベリングされるようにし、(2) 得られた同位体ラベリング細胞外高分子有機物を用いてファウリングさせた膜を同位体顕微鏡で観察することにより、世界で初めて膜ファウリングを可視化し、「何が」膜の「どこに」詰まることにより膜ファウリングが生じるのかを明確にすることに挑戦することを目的とするものである。 本年度は、下水処理場(札幌市創成川水再生プラザ)にて実際の処理に用いられている活性汚泥(下水処理を担う微生物)を採取し、実験室においてバッチ式の培養を行った。その際、微生物の炭素源と窒素源(エサ)として与えるグルコースを13Cで、塩化アンモニウムを15Nでそれぞれラベリングし、培養用の液体培地に添加した。このような液体培地中で微生物を増殖させつつ、経時的に、培地中の細胞外高分子有機物濃度(バイオポリマー(BP), フミン質(HS))をLC-OCDにて定量した。その結果、培養によりBPとHSを含む細胞外高分子有機物を得ることができることが分かった。また、微生物未利用のアンモニウム塩をアンモニウムストリッピングにより、グルコースをUF膜を用いた処理により培養後の培地から除去する手法を確立した。さらに、BPとHSを分画分子量10 kDaの膜を用いて分別する手法を構築した。以上の手法により生成されたBPとHSの組成を、LC-OCDとEEMにより調べたところ、下水の影響を大きく受けるような河川水と同様の組成であることが示された。また、作製した細胞外高分子有機物を吸着させた活性炭を同位体顕微鏡で観察することにより、得られた細胞外高分子有機物が同位体ラベリングされていることを確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、同位体ラベリングしたグルコースと塩化アンモニウムを用いて活性汚泥を培養することにより、同位体ラベリングされたBPとHSを作製することに成功した。また、膜ろ過によるこれらの分離生成法も確立できた。従って、現段階では、当初の計画通りおおむね順調に進展していると判断された。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、同位体ラベリングしたグルコースと塩化アンモニウムを用いて活性汚泥を培養することにより、同位体ラベリングされたBPとHSを作製する手法を確立することができた。次年度は、室内実験にて、これらの同位体ラベリングされた細胞外高分子有機物を用いた膜(MF膜を予定)ろ過実験を行い、ファウリングされた膜を同位体顕微鏡により観察することにより、「どこで」「何が」膜を詰まらせているのかを可視化する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
検討の結果、予算計上していた試薬(ポリペプトン, 酵母抽出物など)が培養に不可欠ではないことが分かり、その分の費用が節約できたため。
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