研究課題/領域番号 |
19K21983
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
庄司 学 筑波大学, システム情報系, 教授 (60282836)
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研究分担者 |
市村 強 東京大学, 地震研究所, 教授 (20333833)
牧 剛史 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (60292645)
長山 智則 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (80451798)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | 長周期型橋梁 / 強震動 / 地表断層変位 / 液状化 / 連鎖地震荷重 / 被災リスク / ハザードマップ |
研究実績の概要 |
令和元年度には「典型的な長周期型橋梁」の数値解析モデルとして耐え得る橋梁サイトの選定作業に注力した.具体的には,熊本地震の際に強震動,地表断層変位,及び,液状化が連鎖して作用し被害が生じたと考えられる橋梁サイトの選定を行ない,橋梁構造物並びにその周辺地盤に作用した連鎖荷重の効果を定性的に把握した. その上で,第1には,熊本地震の震源断層と前記の橋梁サイトを包含するおよそ南北90 km×東西80km×上下40 km の空間領域に対して有限差分法に基づく地震波再現解析を実施し,橋梁サイトにネスティングする第1段階のおよそ南北・東西1km~2km×上下100m~200mの空間領域に対して工学的基盤に相当する2.5秒以上の高周期帯域における入射波形成過程をKMMH16の強震記録等と照合しつつ明らかにした.第2に,Asano and Iwata (2016)並びに国土地理院(2016)により提案されている震源断層モデルに基づきOkada(1985)の食い違い弾性論によって地表変位の計算を行ない,Shirahama et al. (2016)により観測されたローカルな地表断層変位の形成と照合し検証することで,橋梁サイト周辺に生じた地表変位の空間分布の特徴を明らかにした.第3に,KMMH16の地表で観測された強震波形を等価線形化法により工学的基盤相当の地中波に引き戻した上で,橋梁サイト周辺の液状化現象が顕在化した地盤の水平成層プロファイルに対して入射し有効応力解析を行ない,橋梁サイトへのネスティングの第2段階のおよそ橋軸方向100m~200m×橋軸直角方向100m×深度50mの空間領域基部にディリクレ境界条件を満足するよう励振させるための作用形態を明らかにした.以上より,強震動,地表断層変位,液状化の複合的連鎖荷重の長周期型橋梁に対する3パターンの作用形態を考慮して橋梁サイトを選定した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」に示したように,研究を開始した初年度において,研究目的の第1段階として,熊本地震の際に強震動,地表断層変位,及び,液状化が連鎖して作用し被害が生じたと考えられる橋梁サイトの選定を行ない,対象橋梁並びに周辺地盤に作用した連鎖荷重の効果を定性的に把握することができたため.さらに,熊本地震の際に甚大な被害を受けた県道28号線沿いの橋梁群の設計図面や周辺地盤の情報を土木研究所等の協力を得て収集することができたため.
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今後の研究の推進方策 |
研究目的の第2段階として,令和元年度において選定した3パターンの橋梁サイト並びに周辺地盤を包含する3次元FEモデルの構築を進め,強震動,地表断層変位,液状化の複合的連鎖荷重の長周期型橋梁に対する作用メカニズムの逆同定と類型化を本格化させる予定である.その際に,研究代表者並びに分担者各々の研究フィールドの強みを活かして,橋梁サイトへの第1段階のネスティングに対する超高速・高精度・大規模FEM演算を研究分担者の市村が担当し,橋梁サイトへの第2段階のネスティングを3パターンに分けて研究代表者の庄司,研究分担者の牧並びに長山がそれぞれ担当するような研究体制で強力に研究推進をはかるものとする.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究を開始した初年度において,研究目的の第1段階として,熊本地震の際に強震動,地表断層変位,及び,液状化が連鎖して作用し被害が生じたと考えられる橋梁サイトの選定を行ない,対象橋梁並びに周辺地盤に作用した連鎖荷重の効果を定性的に把握することができた. このような研究枠組みにおいて,研究分担者の牧は強震動及び地盤変状(特に液状化をメイン)の連鎖荷重に対して分析を進めることとなったが,その際,研究代表者並びに他の研究分担者が実施してきた既往研究で得られたデータを精査することで橋梁サイトの選定を行なうことができたため,当初申請していた研究経費をいずれも執行するに至らなかった. 次年度においては,対象とする橋梁サイト並びに周辺地盤を包含した3次元FEモデルで高負荷な数値計算を進めていく予定であるので,これらの研究を遂行するに当たっての物品費及び人件費・謝金が必要となる.さらに,令和元年度において得られた研究成果の発表や橋梁サイトに関わる研究資料並びに研究情報の収集を主たる目的として旅費が同様に必要となる.
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