研究課題
熊本地震で発生した長周期型橋梁の地震被害の現象を道路インフラにおける「典型的な長周期型橋梁の連鎖荷重下における非線形動的応答」と捉え,その結果生じる地震被害を説明可能な連鎖荷重の作用メカニズムの逆同定と類型化を試みた.連鎖荷重としては,強震動,及び,地表断層変位等の支持地盤の変状に焦点を当てた.長周期型橋梁としては,これらの連鎖荷重の作用が疑われる大切畑大橋と桑鶴大橋を選定した.大切畑大橋は1次固有周期が1.5秒弱の鋼5径間連続鈑桁橋である.強震動,地表断層変位及び斜面崩壊に伴う地盤変状が重畳・連鎖して作用した結果,橋脚,積層ゴム支承,及び,橋台部の落橋防止ケーブルが損傷し,橋桁には残留変位が生じた.桑鶴大橋は1次固有周期が1.1秒前後の2径間連続鋼斜張橋であり,強震動に加え支持地盤の変状により,橋桁の変位や主塔の傾斜,ケーブルの応力抜けが生じ,橋台部の支承や落橋防止構造が損傷した.2橋の橋梁-地盤系に対して,土木研究所の協力により設計図面や地盤・地質情報を収集した上で,3次元(3D)有限要素(FE)モデルを構築し,いずれの3D-FEモデルに対してもサイト推定波相当の強震動を作用させ,線形あるいは非線形の地震応答解析を実施した.大切畑大橋については,強震動の作用により,床版・橋桁の水平方向のずれや積層ゴム支承のせん断破壊,P4橋脚の塑性化や傾斜が支配的に生じたと推察された.桑鶴大橋については,橋台部の支承機能の損失によって桁端部に浮き上がりが生じ,ケーブルの応力抜けと桁端部の橋壁への衝突が連鎖的に生じる損傷過程が明らかになった.併せて,大切畑大橋の3D-FEモデルに対しては地表変位を想定した静的漸増解析を実施した結果,地表断層変位の作用により,P2-P4橋脚間での床版のずれや橋桁の変形,積層ゴム支承のせん断破壊が助長された可能性が明らかになった.
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件) 学会発表 (4件)
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