研究課題/領域番号 |
19K21984
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
春日 郁朗 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (20431794)
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研究分担者 |
片山 浩之 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (00302779)
竹村 太地郎 長崎大学, 熱帯医学研究所, 助教 (60572899)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | 薬剤耐性遺伝子 / 都市下水 / 都市河川 |
研究実績の概要 |
未処理下水や下水処理水の影響を受ける河川水等を対象として、日本、ベトナム国ハノイにおいて抗生物質耐性遺伝子(ARGs: Antibiotic Resistance Genes)のスクリーニングを実施した。High-throughput qPCRの結果、日本とハノイの下水流入水中に存在するARGsの数は同程度であったが、それぞれに特異的にみられるARGsの存在も明らかになった。共通して検出されたARGsについて、16S rRNA遺伝子に対する相対濃度を比較すると、ハノイの方が日本よりも相対濃度が高いARGsが多い傾向が見られた。日本の都市河川について、定量PCRを用いて下水処理水の流入前後のARGsのコピー数を比較すると、下水処理水の流入によってサルファ剤耐性遺伝子やclass 1インテグロンのコピー数が上昇することが確認され、下水処理水が環境中へのARGsの拡散に寄与していることが明らかになった。また、日本、ハノイ共に、糞便指標である大腸菌などとARGsとの相関は高く、下水に起因する糞便汚染がARGsの動態とリンクしていることが示唆された。 培養法に依存せずにARGsのホストを同定する方法として、抗生物質存在下で増殖能を有する細菌のDNAをEdU(5-ethynyl-2-deoxyuridine)で標識する実験に着手した。下水処理水が流入する都市河川から単離した薬剤耐性大腸菌を用いて標識条件の探索を行った。しかし、フローサイトメトリーで検出する際のノイズシグナルが予想以上に大きく、有意な標識を得ることはできなかった。標識時間やEdUの濃度などの条件を更に変更する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本とハノイにおける水環境中のARGsのホットスポットの評価は予定通りに進展している。一方、EdUによる標識実験については、実験条件の最適化には未だ至っておらず、FACSを用いた実験には着手できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、都市の水循環系におけるARGsの動態評価を日本、ハノイで進める。昨年度の結果に基づいてモニタリングの対象を絞り、より多くの地点や都市水循環系の各ステップにおけるデータの蓄積を行う。 EdUによる標識条件を最適化することに注力して、FACSを用いた細胞分取までの手順を確立する。確立した方法を用いて、環境中で生残性が高い薬剤耐性菌や、下水処理水あるいは水道水に含まれる塩素耐性の高い薬剤耐性菌の同定を試みる。
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