研究課題
本研究は、これまで物理的な観点からのみ議論されていたシェール岩石に対し、初めて、元素組成という化学的な観点からシェール岩石を捉えるものである。具体的には、シェール岩石中のヨウ素やその他の元素の濃縮とその濃度に着眼し、従来の調査より得られている、空隙率や透水係数等の物理データとの間に、明確な相関を見出すという探索的性質の強いアプローチを行う研究である。その結果に基づいて、生産効率が高いスイートスポットを探索する新原理の構築に挑戦する。シェール岩石の元素組成は、研究代表者が十分に経験のある中性子放射化分析法で行われる。また上記の着眼点の根拠は、米国地質調査所が発行するシェール岩石標準試料中においては、地殻に存在する岩石に比べて、ヨウ素が2-3桁濃縮していることを、研究代表者らが見出したことに基づく。新しいエネルギー源として注目されているシェール層において、物理データ(【今後の研究の推進方策】に後述)だけでなく、化学的な情報を加えることにより、生産効率が高いスイートスポットを、従来のような試行錯誤に頼ることなく、高い確度で選択することが可能になる。2020年度は、分析手法の再現性を保証すべく、産総研が発行する日本の標準岩石やNISTの標準試料、カナダの研究所が発行している5種類の標準物質(TILL-1, TILL-2, TILL-3、いずれも土壌試料、WGB-1(gabbro)及び、TDB-1(diabase))について、RNAA(Radiochemical Neutron Activation Analysis, 放射化学的中性子放射化分析法)によりハロゲンの再分析を行った。今後も、まずは、上記試料を含む各国の同様の標準試料を繰り返し分析することにより、ハロゲンを用いた地球化学の学術基盤を確立することを目指す。
3: やや遅れている
本研究の分析対象であるシェール岩石のような未知試料の分析の際には、手法の再現性を保証するため、必ず以前に同手法(ここではRNAA)でハロゲンを定量した試料も同時に分析し、得られた結果が過去のものと誤差範囲内で相違ないことを確認する必要がある。そこで2020年度は、産総研が発行する日本の標準岩石やNISTの標準試料、カナダの研究所が発行している5種類の標準物質(TILL-1, TILL-2, TILL-3、いずれも土壌試料、WGB-1(gabbro)及び、TDB-1(diabase))について、RNAAによりハロゲンの再分析を行った。今後も、まずは、上記試料を含む各国の同様の標準試料を繰り返し分析することにより、ハロゲンを用いた地球化学の学術基盤を確立することを目指す。信頼性の高いデータを持った標準物質は、分析精度を高めるもの、あらゆる議論の基礎となるものとして、その値が多くの地球化学者に利用され、世界的に大きな貢献をすることが期待される。
研究代表者らが開発した放射化学的中性子放射化分析法(RNAA)を用いて、選定・粉末化したシェール岩石のハロゲンの分析に着手し、ヨウ素の濃縮をシェール岩石中の化学的特徴として確立する。本研究で行う固体試料中の微量ハロゲンの定量分析は他の分析手段では非常に難しく、かつ、データの信頼性の点でRNAAに勝る方法はない。また、同様の試料に対し、ヒ素、セレンを中心にハロゲン以外の元素分析を行う。ヒ素、セレンは米国地質調査所の地球化学データベースにおいてシェール岩石中での濃縮の可能性が示唆されている。これらの元素の分析は、機器中性子放射化分析法(INAA)により行われる。INAAを用いると、上記元素を含む33元素を定量することが可能である。ここで確認される、ヨウ素以外の元素の濃縮も、シェール岩石の化学的特徴として確立する。上記を進めることにより、シェール岩石中でその濃縮が確立された元素及びその定量値と、従来シェール岩石に施されてきた調査により得られている物理データ(岩石の空隙率、透水係数、フラクチャリングの際に用いる流体に対する割れやすさ等)との間に、明確な相関を見出し、生産効率が高いスイートスポットを探索する新原理の構築を目指す。
理由:令和元年度に購入予定であった、粉砕機及びその消耗品等について、本経費を使用せずに入手したため、それにかかる予定であった経費は、令和3年度の助成金として使用する予定である。使用計画:令和3年度は、できるだけ多くの放射化学的中性子放射化分析実験を予定しており、その消耗品等や、器具洗浄機の補助部品等の購入経費に当該助成金を使用する。また2022年に延期された国際会議(MARC-XII アメリカ)での発表及び情報収集を予定しており、それについても助成金を使用する。
研究代表者が所属する研究室HPの業績http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/IPA/gyousekilist.html
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