研究課題
研究期間の初年度となる本年度では,以下の通り研究を遂行した。【研究項目1:環境選択性遺伝子のゲノムワイド検索】北海道から四国の国土スケールの気候勾配に沿った数多くの流域で,既存のデータベース等に基づいて,水温・流量・雨量・気温・水質の環境データが連続観測されている地点を選んだ。水生昆虫8種を対象に次世代シークエンサー(HiSeq)によるRAD(Restriction site Associated DNA)解析を行い,各個体のゲノムワイドのDNA配列データを取得した。この際,RAD-PCRプライマーに個体認識タグコードを付加して,同時並行で多個体のゲノム情報を一度に取得した。また,ゲノム情報を補完する情報として,同じ地点から採取した同じ水生昆虫種のRNAseq解析(トランスクリプト―ム解析)データも取得した。【研究項目2:気候変動下の遺伝的多様性予測モデルの開発】各個体が採取された地点の環境変数(水温・流量等)を説明変数として,ゲノム中から環境選択性遺伝子を同定して,それらの遺伝子頻度を環境状態も基づいて予測する「適応進化モデル」を作成した。このモデルの作成には,従来の統計学的手法とは一線を画する機械学習(Random Forestによる決定木モデル)を使って,一般的な統計モデルが抱える入力データの統計分布の制約(例,正規性),説明変数間の独立性,欠損データへの脆弱性等を解決する新規的な手法を開発した。
2: おおむね順調に進展している
【研究項目1:環境選択性遺伝子のゲノムワイド検索】と【研究項目2:気候変動下の遺伝的多様性予測モデルの開発】共に予定していたどおりの内容を進捗できた。
ダウンスケーリングにより気候変動シナリオ化の河川環境の変化を予測し,それに基づいて遺伝的多様性を予測する解析を進める。
遺伝子解析に必要な一部の消耗品の使用期限を考慮して,次年度に購入することにしたため。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 4件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)
Ecology
巻: 101 (10) ページ: e03127
10.1002/ecy.3127
Ecology and Evolution
巻: 10 (13) ページ: 6677-6687
10.1002/ece3.6398
PLoS ONE
巻: 15(3) ページ: e0229120
doi.org/10.1371/journal.pone.0229120
Zootaxa
巻: 4718 (1) ページ: 57?66
http://dx.doi.org/10.11646/zootaxa.4718.1.4