従来の気候変動下の遺伝的多様性の予測は,中立進化(環境選択を受けない)を前提としているが,現実には,例えば低水温に適応した遺伝子型は温暖化が起きれば,水温が低い高標高・高緯度地域に避難して存続できる可能性がある。しかし,従来法では中立遺伝子座が解析されてきたため,環境勾配に沿った遺伝子の「避難現象」を再現できず,遺伝的多様性の低下を過剰に予測する可能性が懸念される。本研究は、ゲノム上の環境選択性遺伝子に着目して,気候変動下における環境勾配に沿った遺伝子型の移動(避難)も考慮した上で,遺伝的多様性をより正確に予測するモデルを開発した点で高い学術的意義がある。
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