研究課題/領域番号 |
19K22001
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
前田 匡樹 東北大学, 工学研究科, 教授 (30262413)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | CLT(直交積層板) / 接合部 / 都市木造建築 / 小幅パネル / 低炭素社会 |
研究実績の概要 |
研究の対象は、仙台などの大都市の中心市街地に多く見られる3階建~10階建程度の集合住宅(マンション)、オフィスビル、商業施設、学校などの一般的な建築である。これらの建築の壁や床をCLTパネルを用いて構成する場合の接合部を開発する。現在主流の木質部材の接合法は、プレートやピン、釘、ネジ等の金物を使用するのが主流である。しかしながらこれらの接合法では、剛性・強度の高い金属が木材にめり込みや割れが発生し、繰り返し力が作用するうちにゆるみが生じる。そこで、本研究では、応募者が開発したCLTパネルに設けた切り欠き(凹部)に木ダボを嵌め込みかみ合わせる工法や、少数のドリフトピンと鋼板で接合する新しい接合形式を対象として、要素実験及び部材実験を行い、破壊性状や変形性能を把握し、接合部の設計法を開発する。木材同士をかみ合わせることにより、金属を用いる場合に比べ接合面での応力集中が緩和され、木材に損傷が生じないことから、高強度・高剛性で繰り返し載荷に強い接合部が実現できる。2017年に行った接合部要素の予備実験の結果では、木ダボ形式接合により在来型に対して、7倍の高剛性と1.6倍程度の強度が得られることが分かっている。 研究は、以下に示すように、①接合部の設計法:接合部の形状、寸法、ダボの材種をパラメータとした要素実験を行い、接合部の設計法の開発、②CLTパネルの性能評価:パネル内へ複数の接合部を配置する場合の影響や協働効果、パネル全体の面内剛性や耐力などせん断特性の評価、③提案型接合部を用いた構造システムの検討、④CLT中高層建物の構造設計法の提案という流れで実施し、①及び②については、実験により評価法・設計法を開発するためのデータが得られ、③及び④の基礎資料が得られ、2年目に継続して検討する準備が整った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
木ダボ接合部については、実験を完了し、性能評価や設計法の提案を行った。 ドリフトピンと鋼板による接合部ついては、ドリフトピンの木材へのめりこみ試験、接合部の要素実験、提案接合部を用いた耐震壁の実験などを行い、順調に成果が出ている。
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今後の研究の推進方策 |
2年目の2020年度については、提案型接合部を用いた構造システムの検討、及び、CLT中高層建物のプロトタイプの設計に取り組み構造設計法の提案へとつなげている予定である。 研究は、おおむね順調に進んでいたが、コロナウィルスの拡大により、情報収集や研究打合せのための出張が難しい状況であり、追加の実験などに遅れが出る可能性がある。 したがって、プロトタイプ建物御設計検討など解析的な研究を先行して進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度に行った実験では、事前の準備に時間を要したため、予定よりも試験体数を少なめに設定したこと、また、宮城県CLT等普及推進協議会の協力により、試験体の材料(CLTパネルや接合金物)の製作費が予想よりも費用が掛からなかったことなどから、当初予算を繰越すこととなった。 2020年度は、それらの予算も含め、要素実験や壁架構実験など大型の試験体による実験を実施して、データを収集する計画としている。
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