1. 微気候を加味した市街地形態の統一的区分及び区分化手法の提案 様々な市街地形態を包含する都市の代表例として東京首都圏の形態分析を行い、この結果に基づき、既存の手法では分類困難であった、アジアの都市に多くみられる異なる形状の建物が混在する複雑な市街地を有する都市も含めて、都市を統一的に区分することが可能な手法を構築した。この際、対象市街地の地理的条件(沿岸部・内陸部等)により変化する気温ではなく、主として建物の密度や高さ等の市街地形態パラメータと都市表面の被覆条件のみによって決まる熱放射環境の差異に着目して手法構築を行った。 2. 機械学習を利用した熱放射環境の長期予測 類型化区分の基礎となる市街地の熱放射量の空間分布の長期間の変動を機械学習により予測するモデルを開発した。機械学習には、遺伝的アルゴリズムと誤差逆伝番法によって最適化した多層ニューラルネットワークを用いている。 3. 提案手法のアジア都市への適用性確認及び区分ごとの形成微気候の分析 提案手法を用いて4都市(北京、鄭州、西安、上海)のゾーニングマップを作成するとともに、区分ごとに形成される微気候(熱放射環境に関わる都市表面温度)の分析を行い、この手法が首都圏以外のアジアの都市においても適用可能であることを確認した。さらに、区分ごとに、自然被覆率、日射反射率、グロス建蔽率と都市表面温度との相関を分析し、自然被覆率が都市表面温度に大きく影響することを明らかにした。 4. 微気候を加味した市街地形態区分を用いた広域気象解析 提案手法により作成した仙台のゾーニングマップを都市キャノピーモデルに組み込み、広域気象解析を行った。また、熱収支分析により、市街地に流入出する顕熱・潜熱量を評価し、温度・湿度分布の形成要因を明らかにし、海岸線からの距離が等しくても、区分が異なると熱収支構造が異なることを確認した。
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