研究実績の概要 |
古い鉄筋コンクリート(RC)、鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)建物の取り壊しと新築は、二酸化炭素の排出が大きいので、改修により長く使用することが望ましい。一方、古いRC,SRC建物には耐震性に劣るものが多く、耐震補強が必要な場合が多い。日本は、他国に先んじて古い建物の耐震補強を進めてきた。2011年の東日本大震災では、多くの耐震補強の有効性が確認された。しかし、中高層RC、SRC建物では、有効でない例が散見された。特に、東北大学の青葉山キャンパスでは、壁に隣接する柱で、鉄筋・鉄骨の座屈・破断、コンクリートの崩落が生じた。余震よる崩壊の恐れありとして地震直後に応急補強され、その後、取り壊された。 今回の研究の目的は、次の3点である。(1)RC壁についてこのような破壊が生じることを実験的に証明する。(2)鉄骨ブレースを用いた補強でも同様の破壊が生じることを証明する。(3)このような破壊を防ぐ方法を提案する。 昨年度は、RC壁について実験を行った。試験体の大きさは実際の1/4程度である。壁板には高強度コンクリートを用いた。柱・梁には、実際の補強と同じく、浅い孔をあけてアンカー鉄筋を埋め込んだ。加力によって抜け出しが生じ、引張ひずみが下端に集中した。その結果、圧縮側では塑性残留ひずみに伴う鉄筋の座屈とコンクリートの剥落、引張側では鉄筋の破断が生じた。つまり、実験室で地震被害を再現することができた。
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