研究課題/領域番号 |
19K22012
|
研究機関 | 長岡工業高等専門学校 |
研究代表者 |
村上 祐貴 長岡工業高等専門学校, 環境都市工学科, 教授 (70509166)
|
研究分担者 |
杉原 幸信 長岡技術科学大学, 工学研究科, 助教 (00824335)
池田 富士雄 長岡工業高等専門学校, 機械工学科, 教授 (30353337)
宮田 真理 長岡工業高等専門学校, 物質工学科, 助教 (50804697)
外山 茂浩 長岡工業高等専門学校, 電子制御工学科, 教授 (60342507)
上村 健二 長岡工業高等専門学校, 電子制御工学科, 准教授 (80708090)
|
研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
|
キーワード | 左官 / 技能可視化 / 暗黙知 |
研究実績の概要 |
左官工における一連の技能獲得までには7~10年を要すると言われており、若手入職者が定着しない要因の一つである。一連の技能獲得までに長い年月が必要な主たる要因は、技能継承プロセスが徒弟的であり「見て覚える」ことにある。左官技能のような複雑な運動の集合に対し、初めから動作全体を模倣し、技能を獲得していくことは極めて難しい。 本研究では、データマイニング手法である自己組織化マップ(SOM)を用いて熟達左官者に共通する暗黙知を可視化し、スポーツ科学の運動技能獲得過程を取り入れた科学的トレーニング方法の創生に挑戦する。2020年度は左官職人2名、土間職人3名を対象に壁面への塗付け時のコテに作用した水平力、鉛直力、モーメントを計測し、その結果以下の知見が得られた。 1) 壁塗り試験における左官職人と土間職人の塗付け・仕上げ回数や試験時間を比較したところ、土間職人の塗付け回数は左官職人の約2倍、仕上げ回数は約6倍となり、試験時間は約2~3倍の時間を要した。2)左官職人のコテの平均移動距離は塗付けと仕上げの両工程で土間職人より長い距離を示した。以上の結果から、塗付け、仕上げ時ともに、一回あたりの移動距離を長くすることで、モルタル表面の凹凸が少ない仕上がりにできるのではないかと考えられる。3)床塗り試験における左官職人と土間職人の均し回数と試験時間を比較したところ、均し回数は土間職人は左官職人の約5倍、試験時間は約2倍であったため、同じコテを用いる職業であっても左官職人と土間職人とでは異なるコテの扱い方をしておいる可能性があると考えられる。4)練習専用模擬材料の開発を進め、高吸水性ポリマーにポリビニールアルコールとアルミナを添加することで左官材料と近いレオロジーを獲得することができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は、多くの左官職人や土間職人の動作測定を進める計画であったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、測定が思うように進まず5名の被検者の測定に留まっった。一方、昨年度課題となったコテの圧力情報の取得はセンサーを内蔵したコテを製作し、塗り付けや仕上げ時にコテに作用する水平力、鉛直力、モーメントを計測することが可能となり、技能継承に資する重要な知見を抽出することができた。また、練習専用模擬材料の開発を進め、高吸水性ポリマーにポリビニールアルコール、アルミナを添加することで左官材料と近いレオロジーになることが明らかとなり、練習材料のベースはある程度完成した。以上のことから、研究の達成度はおおむね順調に進展しているとした。
|
今後の研究の推進方策 |
(1) 2020年度までの検討で、熟達者のコテの動作(角度、圧力)については見通しがついた。新型コロナウイルスの感染拡大により昨年度測定できた被験者は5名程度に留まったが、本年度はPC床版を製作する企業と連携し、多くの被検者の動作測定を実施できるように調整を進めており、職人のコテの動作を可視化し、自己組織化マップ(SOM)を用いて熟達者に共通する技能を抽出し、形式知化する。 (2) (1)により形式知化された技能を習得する部分練習法および全体練習法をスポーツ科学に基づいた部分練習法および全体練習法を確立し、職人に試行して効果の検証を行う。 (3) 2020年度に開発した練習材料をベースにクリーンな屋内環境下でも練習可能な練習専用模擬材料の開発を職人にヒアリングを繰り返しながら進める。
|