研究課題/領域番号 |
19K22016
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
阿部 晃久 神戸大学, 海事科学研究科, 教授 (50221726)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | マイクロバブル / OHラジカル / 水中衝撃波 / 化学反応解析 |
研究実績の概要 |
舶用バラスト水処理や船底付着生物除去を始めとする様々な海上移動体や海洋構造物への生物付着を防ぐ経済的効率的技術の確立が国際的に求められている。本研究では、衝撃圧力によって誘起する微小気泡運動の有効活用により、酸化作用物質(フリーラジカル)の効率的生成方法および条件を見出し、省エネルギーかつ安全安心な海洋微生物処理技術を確立し、海事産業分野に貢献できる海事科学分野発の圧縮性流体力学に基づく新しい基盤技術を創出することが目的である。 本年度の研究では、単一気泡の衝撃波による一連の崩壊運動によって生じるOHラジカルの生成量の理論的予測について検討を行なった。数十マイクロメートルオーダーの直径の気泡が最大圧力約6 MPaの水中衝撃波の圧力作用を受けると、気泡は収縮膨張運動を行なって崩壊する。気泡の収縮時には、気泡内の圧力及び温度の著しい上昇を伴い、その熱エネルギーによって気泡内の水蒸気が解離し、OHラジカルが生成されると考えられる。水蒸気からOHラジカルが生成するためには、約5000 Kが必要であることが知られている。本解析では、衝撃波作用による空気泡の収縮現象が高速で、ナノ秒オーダーの短時間であることから気泡内の空気及び水蒸気は断熱圧縮される仮定の下、水に関する27種類の化学種が関与する化学反応式を用いて解析を行なった。その結果、気泡内温度が最大となるタイミングとOHラジカルの生成量が最大となるタイミングは異なることが見出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ほぼ予定通りの進捗である。衝撃波圧力作用を受けたマイクロバブルの運動によりOHラジカルの生成量の理論予測を行うことまで予定通り達成できた。また、気泡内温度の上昇とOHラジカルの生成量の増加にずれが生じるなど興味深い結果を得た。
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今後の研究の推進方策 |
解析に用いた条件設定では、衝撃波による高速現象であることから断熱圧縮が保たれると仮定したが、その仮定の妥当性について検討を深める必要がある。また、実験によって理論予測の妥当性を検証する。水中衝撃波の気泡崩壊によって発生するOHラジカルの量は直接計測は困難であるが、OHラジカル生成に伴って発生する過酸化水素濃度の計測によって、生成量の傾向を知ることができると考えられる。効率的な実験のため、水中放電衝撃波発生装置を用いる実験を実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験に着手する予定であったが、使用する予定であった放電装置に動作の不具合が生じたため、その原因追及に時間を要している内に、新型コロナウイルス感染拡大により、学舎の使用制限などによる実験自体の実施が困難となり、実験消耗品や実験補助謝金等の予算が支出できなかった。放電装置の不具合が部品の老朽化にあると想定されることから、部品交換の費用に充てる計画である。
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