研究課題/領域番号 |
19K22016
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
阿部 晃久 神戸大学, 海事科学研究科, 教授 (50221726)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2023-03-31
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キーワード | マイクロバブル / フリーラジカル / 水中衝撃波 / バラスト水処理 / 船底付着物除去 |
研究実績の概要 |
舶用バラスト水処理や船底付着生物除去を始めとする様々な海上移動体や海洋構造物への生物付着を防ぐ経済的効率的技術の確立が国際的に求められている。本研究では、衝撃圧力によって誘起する微小気泡運動の有効活用により、酸化作用物質(フリーラジカル)の効率的生成方法および条件を見出し、省エネルギーかつ安全安心な海洋微生物処理技術を確立し、海事産業分野に貢献できる海事科学分野発の圧縮性流体力学に基づく新しい基盤技術を創出することが目的である。 本年度の研究では、放電装置及び弾性膜やシートを用いたキャビテーション生成とそれらの気泡崩壊に伴うOHラジカル生成の状況を前年度のシミュレーション予測で得られている結果との傾向の一致が得られることの検証を行う予定であったが、前年度の主動力源となる放電装置の故障から復旧ままならず、急遽新たな装置の作製を判断した。しかしながら、コロナ禍の影響により、年度始めの予定であった納期が、度重なるコロナの影響を受けて結果的に12月中旬まで遅れた。実験水槽の作製なども並行して進めていたものの、完全に実験が滞り、予定していた実験を行うことができず、データ収集や解析などに着手できない状況となった。一方、主力装置での実験ができなかったため、代替としてアルゴンガス気泡の崩壊によるOHラジカル生成の数値的予測を進めると共に、キャビテーション噴流による観測研究を実施し、本研究に関連して、微小気泡群と衝撃圧力波の干渉による気泡の連鎖崩壊現象について検討を行うに留まった。予定していた実験自体が実施に至らなかったため、本年度の明確な研究成果を示すことができない結果となってしまった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
実験の実施に不可欠な高圧放電装置の故障により実験を行うことができなかった。装置がオーダーメイドであったことから、製造メーカーへ修理依頼をしたが、不具合を生じた装置の部品が海外製品であったため、コロナの影響で調達に3ヶ月以上の時間が必要であったことや修理費用が高額になることが判明し、急遽、前年度に新たな装置を発注することとした。当初、年度初めの納品予定であり、実験に着手できる予定であったが、装置の製作過程で、部品の性能がカタログ値と異なるなどのトラブルや企業内でのコロナ感染者の発生など、企業側からの再三にわたる要請によって納期が2から3度延期され、最終的に納品が12月中旬にまでずれ込んだ。それまでの間、実験水槽の作製などを進めていたものの年度内の実験データ取得やデータ分析などは難しいと判断し、本研究課題は最終年度を迎えていたが、研究期間の1年延長を申請せざるを得ない事態となった。
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今後の研究の推進方策 |
水中衝撃波を生成するための主要な高圧放電装置を新規導入したことから、至急導入装置の性能試験を実施し、生成できる衝撃波の減衰特性を見出し、性能評価を実施する。その後、いくつかの周波数での弾性膜振動による気泡生成実験を試み、可視化観測および圧力計測、OHラジカル生成に伴って発生する過酸化水素濃度の計測などの分析を中心として実施し、効果的なラジカル生成が可能となる微小気泡生成方法について考察を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究で実施する実験の主要装置(高圧放電装置)が前年度に故障し、部品交換による修理費用が高額であったことから、急遽新たに装置を作り直すこととした。年度初めに納品可能とのことで新たな装置の作製を判断したが、コロナ禍によるメーカー側の感染者発生や半導体部品への置き換えによる調整作業により納品の延期が繰り返され、最終的に年末の納品となった。そのため、年度内に実施を計画していた実験が実施できず、実験消耗品費および成果報告のための旅費など、計画通りの予算執行ができなかった。次年度に実験消耗品費および成果報告のための旅費として執行する計画である。
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