本研究では、衝撃圧力によって誘起する微小気泡運動の有効活用により、酸化作用物質の効率的生成方法および条件を見出し、省エネルギーかつ安全安心な海洋微生物処理技術を確立し、海事産業分野に貢献できる新しい基盤技術を創出することを目的として実施した。 衝撃波による単一気泡崩壊時のOHラジカル生成量の理論的予測について、気泡内温度が最大になるタイミングとOHラジカル生成量が最大となるタイミングが異なることが見出された。また、アルゴンガス気泡の崩壊によるOHラジカル生成の数値的予測及びキャビテーション噴流中の気泡の連鎖崩壊現象についても検討した。 小型水槽内で放電衝撃波を発生させ、水槽上部に設置した様々な弾性体としての高分子材料膜や薄板への透過と反射による気泡生成挙動を評価した結果、音響インピーダンス差のある界面で、生成膨張波の強さが影響を受け、水槽内壁及び放電蒸気泡界面での衝撃波の反射・干渉による局所的な負圧領域が、キャビテーションを多数生成する原因となることを把握した。また、Arガスの溶解によりOHラジカルの生成濃度上昇を高められることを示した。 最終的に水中放電を受けた金属板が変形・振動することにより金属板周囲の水に減圧領域を生じさせ、キャビテーション気泡を生成と気泡運動の誘起を確認した。本方法では衝撃波の入力だけで気泡及びOHラジカルの生成が可能であり、バラスト水処理の簡略化や殺菌効果の向上に貢献できると考えられる。可視化観測では、放電エネルギーによる水中衝撃波及び衝撃を受けた金属板中を縦弾性波及びせん断波が伝播し、2種類の水中斜め衝撃波の生成と金属板表面の微小気泡生成を確認した。また、金属板表面に発生付着する微小気泡の発生は、第1水中衝撃波の直後及び電極部蒸気泡の崩壊衝撃波発生直後に生じることから、いずれも強い衝撃が弾性板に与えられたことが原因であると考えられた。
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