研究課題
宇宙用材料・システムは宇宙環境の影響により特性変化・劣化を受けることが知られている。本研究課題ではレーザーデトネーション型原子状酸素環境模擬実験装置を用いてポリイミドを基準材料としている現状の国際基準の不完全性を明確化し、科学的に根拠のある新基準の確立・提案を目指すことを目標としている。一般に電気的に中性な原子ビームの正確なフラックス測定は困難であり、原子状酸素に対してはASTMでも便宜的にポリイミドのエロージョン量から評価する手法が推奨されているが、その値が信頼できないことが全ての不整合問題の発端である。そこで国内では本研究グループの装置にのみ取り付けられている原子線飛行時間(TOF)計測システムを用いて、TOFスペクトルの面積強度等から原子状酸素照射量の多角的評価を実施し、ポリイミド質量減少量と相互比較することにより原子状酸素フラックスを絶対評価する手法を確立することを目標にしている。FY2019-2021年度には上記手法に対する検証を行うとともに、超低高度衛星SLATSのフライトデータの詳細解析を実施した。ポリイミドの反応効率の環境依存性を明確化するためのDual-PSV法でのArビーム同時照射効果実験により確認された不活性分子の高エネルギー同時衝突によるポリイミド増速劣化現象を、N2同時衝突環境であるSLATSフライトデータでも確認することに世界で初めて成功した。これによりVLEOにおける材料劣化原因に新たな要素が追加され、既存の地上実験の問題点が明確化された。FY2022年度にはSLATSフライトデータの詳細解析の結果、既存の大気モデルから予測された大気分子密度とSLATS実測値に大きな乖離がある事が解析され、地上実験でリファレンスデータとされていた軌道上材料劣化データの解析にも重大な問題がある事が確認され、国際基準を変更する場合の基礎的データを得ることができた
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http://www.space-environmental-effect.jp/index.html