研究課題/領域番号 |
19K22018
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
葛山 浩 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (80435809)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | 惑星大気突入 / 電磁力エアロブレーキング / 電磁流体力学 / アーク気流 / 膨張波管 |
研究実績の概要 |
本研究は、申請者の数値解析により予想された高高度での電磁力エアロブレーキングで発現する臨界高度の存在を実証し、その発現機構を解明することを目指している。臨界高度の現象解明のためには、本来は再突入流れ(衝撃層内のみに電離が生じる)を忠実に再現できる膨張波管での試験が望ましく、JAXAの大型膨張波管を用いた試験を予定しているが、本年度は、コロナ禍の影響のため、試験が実施できなかった。そこで、昨年度に引き続き、JAXA大型アーク風洞にて、気流に電離促進剤を添加して、衝撃層内を電離させる実験を試みた。昨年度の試験では、試験模型の前方にコイン形状のアルカリ炭酸ペレットを搭載したが、衝撃層内からナトリウム原子の強い輝線が観測されたものの、イオンの輝線は観測できず、かつ磁場印加による発光スペクトルおよび衝撃層の変化も認められなかった。この理由として、ナトリウムは気流に十分に添加できているものの、イオン化に必要な電離距離が十分に稼げていないことが考えられた。そこで、本年度は、模型の前方からスパイクロッドを伸ばし、その先端に炭酸ナトリウムペレットを搭載し、電離距離を稼ぐ実験を実施した。本試験により、ナトリウムが気流の前方から十分に混ざっていることが、発光分光から明らかになったが、依然としてイオンの輝線は確認できなかった。しかし、熱化学平衡計算からの予測では、十分な量の基底イオンが存在している可能性が高く、単にイオンの励起準位が高いため、イオン輝線を捉えることができなかっただけ(つまり基底イオンのみが存在)である可能性が高い。このため、今後は、スパイクロッド添加法において、磁場印加の有無で生じる、詳細なスペクトル変化と衝撃層厚みの差異を調べる必要があることがわかった。また、膨張波管試験については、本年度に試験用の電磁力模型の製作を完了しており、来年度(R03)中旬に試験を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍の影響で膨張波管試験は遅れているが、その代わりに、大型アーク風洞での電離促進剤添加試験が順調に進行しており、様々な知見が得られている。また、膨張波管試験用の電磁力模型の製作も完了しており、来年度(R03)中旬に試験を実施できる。
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今後の研究の推進方策 |
JAXA大型アーク風洞での電離促進剤添加試験において、磁場印加の有無によるスペクトル変化と衝撃層厚みの変化を発光分光試験(多点同時計測)により詳細に調べる。また、製作済みの電磁力模型を用いて、膨張波管試験を実施し、発光分光計測およびシュリーレン撮影を用いて、発光スペクトルと衝撃層厚みの変化を捉える。その際、膨張波管の気流条件を変化させ、数値解析も援用し、臨界高度の存在条件を探る。これらの試験結果を鑑みたうえで、時期に余裕があれば、次のステップとして、レーザートムソン散乱計測による電子状態の調査も行う。この際、非定常計測を実施する必要があるため、鳥取大学のアーク風洞にてレーザートムソン散乱法の一発計測を実施し、非定常計測のノウハウを蓄積したうえで試験に臨む。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響で、R02年度に予定していたJAXA膨張波管での試験が行えなかったため、次年度に研究計画を順延した。次年度に実施予定の膨張波管試験では、発光分光、シュリーレン撮影、レーザートムソン散乱計測を予定しており、これらの実験に必要となる分光用回折格子、シュリーレン撮影用レーザー光源、およびトムソン散乱系システムの輸送費、また関連した光学部品に予算を支出する。また、これらの計測では、非定常計測が必要となるが、その計測法の習熟のため、鳥取大学アーク風洞での一発計測を予定しており、このアーク風洞のオペレーションに必要となる冷却系チラーを購入する。
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