研究課題
2021年度は、主に極低温冷却面上での着霜現象の特徴であるミスト化を考慮した着霜解析手法の構築と基礎実験による現象の調査に取り組んだ。基礎実験では極低温平板伝熱面を低速風洞内に設置して着霜実験を行った。平板前端部と後端部で霜層が分離して形成され、マクロレンズでの観察では、平板上の位置や時間によって明らかに異なる結晶構造を有することがわかった。このことから、極低温下では昇華凝結過程とミスト沈着過程の二つのプロセスで霜が形成され、位置や時間により各プロセスの寄与率が変化すると結論付けられた。霜層成長シミュレーターの開発についても、二つの着霜プロセスに着目して研究を行い、昇華凝結過程には2020年度から取り組んでいる昇華凝結モデルを用い、ミスト沈着過程には一般動力学方程式を基にミストの生成・輸送・粒径成長・沈着を考慮した着霜モデルを構築した。これらを統合して、極低温平板上での着霜を対象とする数値計算を行い、ミスト化を考慮したことで、極低温下特有の前端突起や無着霜領域の形成が数値計算でも再現された。研究期間全体を通じてアルミニウム材を用いた超撥水材による着霜低減効果の基礎的研究と様々な条件に対応する霜層成長シミュレーターの開発を行った。超撥水性付与により比較的高温の冷却平板では過冷却液滴の凍結遅延による着霜遅延効果、極低温円管では吹き飛び効果による着霜低減効果が確認された。伝熱面への表面処理による着霜低減、抑制を実現する上で非常に意義の大きい成果である。霜層成長シミュレーターの開発では、定量的な精度の向上のためにモデルの更なる検討が必要ではあるが、氷点から極低温までの様々な冷却面温度に適用可能であり、今後着霜メカニズムの解明や低温下での熱交換器の性能予測などへの応用が期待される。また、目標の一つとしていたSUSへの陽極酸化皮膜の作成については達成できず、今後の課題となった。
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日本冷凍空調学会論文集
巻: 38(2) ページ: pp. 59-71