研究課題/領域番号 |
19K22023
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
桑名 一徳 山形大学, 大学院理工学研究科, 教授 (30447429)
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研究分担者 |
矢崎 成俊 明治大学, 理工学部, 専任教授 (00323874)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | 森林火災 / 延焼速度 / 移動境界問題 |
研究実績の概要 |
森林火災がこの数十年で急増している.森林火災の延焼シミュレーションで延焼速度を予測できれば効率の良い消火が可能になる.大スケールの森林火災に対して反応性熱流体シミュレーションを実施するのは計算負荷が高いので,延焼モデルを利用したシミュレーションが現実的である.延焼モデルを用いた森林火災のシミュレーション結果が延焼速度を過小評価しがちであることが知られており,延焼メカニズムのスケール効果が正しく反映されていない可能性がある.本研究では比較的大規模な野外実験と実験室規模の実験を実施し,延焼速度を増大させるメカニズムおよびそのスケール効果を明らかにすることを目指す.さらに,火災前線の移動を高速にシミュレーションできる数値スキームの開発も行う.2019年度は,野外実験および実験室規模の風洞実験を実施し,森林火災における延焼を移動境界問題ととらえた数値スキームの検討を行った. 有風下の野外実験では,森林火災の火災前線を模した線火災を可燃性液体を燃焼させることにより形成した.火災域周囲の自然対流と横風の相互作用により竜巻状の火炎が形成される,いわゆる火災旋風現象の発生が確認された.火災旋風が発生すると燃焼率が急上昇することも確認された. 実験室規模の風洞実験でも,野外実験と同様に可燃性液体を燃焼させることにより火災前線を模擬し,横風との相互作用により火災旋風が発生することを確認した.風洞を用いて風速を制御するとともに,燃料容器を可燃性液体のタンクと接続することにより燃料の連続供給を可能にし,準定常な燃焼状態を達成した.またスモークによる火災域周囲の流れ場の可視化を試みた. 火災前線の移動をシミュレーションする数値スキームの開発も行った.火災前線を閉曲線で表し,局所的な延焼速度に従い延焼が進行する様子をシミュレーションできるようになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
比較的大規模な野外実験および実験室規模の風洞実験を実施し,延焼速度が上昇するメカニズムの一つである火災旋風現象を再現できた.また,延焼過程をシミュレーションできる数値スキームを構築した.いずれも,研究実施計画をおおむね達成できた.
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今後の研究の推進方策 |
2019年度に引き続き野外実験および風洞実験を実施する.異なるスケールの実験結果を比較検討し,さらには実大規模の森林火災における延焼速度の予測につなげるために,相似則を検討する.特に,浮力の影響により延焼速度が上昇する現象についてスケールモデリングの手法を用いて検討する.現在の延焼モデルは,小規模実験のデータをもとに延焼速度が計算されることが多い.本研究の成果により,小規模実験のデータを実規模火災に適用するための指針が得られると期待される.この新しい延焼モデルを本研究で開発した延焼シミュレータに組み込むことにより,高精度の延焼シミュレーションが可能になる.
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次年度使用額が生じた理由 |
野外実験を複数回計画したが,風速を含む天候条件が実験に適していないことがあり,実験は一度(3日間)しか実施できなかった.次年度に再度野外実験を実施する計画である.また,2020年1月以降に計画した共同研究者との研究打ち合わせを,新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて中止した.このことにより旅費の一部で次年度使用額が生じた.2020年度に状況が改善してから研究打ち合わせを行う計画である.
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