研究課題/領域番号 |
19K22023
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
桑名 一徳 山形大学, 大学院理工学研究科, 教授 (30447429)
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研究分担者 |
矢崎 成俊 明治大学, 理工学部, 専任教授 (00323874)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | 森林火災 / 延焼速度 / 移動境界問題 / 火災旋風 |
研究実績の概要 |
山火事や森林火災など,大規模な林野火災の件数が増加している.林野火災の被害を最小限に抑えるためには,延焼速度を正確に予測することが重要である.どのように延焼し,消火活動により延焼挙動がどう変化するかを予測できれば,効果的な避難・消火活動が可能になる. 本研究では2つの方向から研究を進めている.1つは延焼速度に影響を及ぼす要因の抽出およびそのスケール効果の検討であり,もう1つは延焼シミュレーションに活用できる数値スキームの開発である. 延焼速度に影響を及ぼす要因として,本研究では可燃性物質の種類や性状,風速,土地の傾斜,局所的な火炎ダイナミクスについて検討した.文献データの整理により多くの情報が得られたが,火炎ダイナミクスに関して,スケール効果を主として不明な点が残されているため,異なる規模での実験および相似則に基づいた解析を行った.既存の延焼モデルは火災規模が大きくなると延焼速度の予測精度が低下する傾向があることが報告されており,火炎ダイナミクスのスケール効果を理解することは重要である.延焼速度を上昇させる要因の一つとして火災旋風現象に特に着目した.火災旋風が発生しやすい条件およびそのスケール効果を整理するとともに,火災旋風の発生が延焼速度増加に及ぼす影響を定量的に評価することを試みた. 延焼シミュレータ―の開発においては,局所的な延焼速度をもとに火災前線の移動挙動を数値計算できる数値スキームの構築を試みている.このスキームは,火災前線のスケール解析によりスケール効果を考慮できるようにするとともに,安定で高速な数値計算を実現することを目指すものである.計算格子点を適切に挿入することにより高速な数値計算を実現できることが確認された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた実験および理論解析による火炎ダイナミクスの理解について順調に進展している.また,シミュレーションモデルの構築も順調に進展している.一方で,新たなシミュレーション手法の構築に関して,新型コロナウイルス感染症の影響もあり詳細な検討および追加の解析が完了していないため,今後の研究の推進方策に反映させる.
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今後の研究の推進方策 |
実験データの解析および延焼シミュレーションモデルの構築を引き続き実施する.これまでの検討により,火炎ダイナミクスのスケール効果が延焼速度に大きな影響を及ぼすことが明らかになった.したがって,シミュレーションモデルにおいても火災規模に基づいて延焼速度を調整できるようなスキームを構築する.このために,火災前線形状のスケール解析により,適切にスケール効果を考慮できるようにする.また,実験結果をもとにスケール効果を考慮した延焼速度データベースを構築し,延焼シミュレーションで活用できるようにする.
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度の検討により,火炎ダイナミクスのスケール効果を考慮できる数値スキームの構築が不可欠であることが明らかになった.これを実現するために必要な研究分担者および共同研究者との詳細な打ち合わせが,新型コロナウイルス感染症の影響で困難であった.このことにより次年度使用額が生じた.
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