研究課題/領域番号 |
19K22025
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
三輪 空司 群馬大学, 大学院理工学府, 准教授 (30313414)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | 超音波 / 非破壊検査 / 加振 / ドップラ / PC構造物 |
研究実績の概要 |
コンクリートを鋼棒により圧縮し,耐ひび割れ性能を向上させたプレストレスト(PC)コンクリート構造物において,鋼棒保護用シース管の充填剤の充填不足やそれにともなうPC鋼棒の腐食が顕在化しており,その検知が喫緊の課題となっている。従来法である広帯域超音波法はコンクリート内の骨材等による不要散乱波によりPC鋼棒からの反射波の特定が困難となる場合があった.そこで,本研究では広帯域超音波法に鋼材を電磁加振した際のドプラエコーから鋼材のみを選択的に受信可能な電磁加振超音波ドップラエコー計測法を導入し、PC鋼材劣化評価への適用性を検討する。そこで,(1)広帯域超音波ドップラ計測システム開発、(2)加振による鋼材の振動数値解析法の開発、(3) PC供試体、実橋梁での実験的検討の3テーマにより研究を遂行する。各研究項目毎の本年度の成果を以下に挙げる。 (1)では昨年度開発した超音波ドップラエコー計測システムにおいて問題となっていたSN比改善のため、AD変換器内部で発生する不要ノイズを低減するためのAD変換システムの開発と同期加算による信号のSN比向上のための同期制御システムを構築し、SN比を20 dB程度向上させた。 (2)では励磁コイルによるコンクリート内の鉄筋の加振力の電磁界解析に合わせ、同一モデルにより鉄筋を加振源とする弾性振動解析を連成解析可能なFEM解析システムを構築し振動変位の数値解析的な検討を行った。 (3)では樹脂シース管、金属シース管内部に充填するモルタルの充填率を0%、100%の2種類としてPC供試体を作成し、改良した計測システムにより加振応答の妥当性について検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)では、昨年度開発したプロトタイプの加振ドップラエコーシステムにおいて問題となっていたSN比の改善を重点的に検討した。昨年度まで使用していたPCIスロットを利用したPC内臓型のAD変換器はPC内部からの特定周波数成分を持つ誘導雑音が多く混入していることがわかり、加振周波数を変化させた場合、その2倍で現れるドップラ成分の周波数に重畳する問題があった。そのためAD変換器をUSB接続を行う外付けタイプに変更し雑音を根本的に除去した。また、チャンネル数も増えたことで複数回のドップラ信号を同期加算するための同期信号を計測可能となり、10回の加算平均を行い白色雑音を理論通りに低減できた。また、高い再現性でドップラ成分が計測できることも確認でき、本年度のシステム開発の目標は達成できた。 (2)では昨年度開発した励磁コイルによる鋼材への加振力のFEM解析において、そのメッシュにコンクリートを加えて、鉄筋を加振源とする振動による鋼材の振動変位を解析可能なシステムを構築した。さらに、電磁界と弾性振動解析を連成させることでより詳細な振動変位の評価を行うことで、本年度の目標は達積できた。 (3)では、PC構造を模擬した供試体として、樹脂シース管内にPC鋼材を配し、シース管内部をモルタルで充填したものとしていない供試体の2種類の充填率の供試体を用いて、加振エコー実験を行った。その結果、充填率0%、100%においてそれぞれ2.3μm、0.5μmの振動変位となり大きな違いが見られた。鋼材の加振によるドップラエコー成分は充填率100%の場合、鋼材が振動するが、充填率0では空気により超音波が遮断されるため超音波が振動する鋼材に届かず振動変位が小さくなったものと考えられる。当初の目標は達成できた。 これらのことから,研究は概ね順調に推移していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は本手法を実際のPC橋梁に適用し有効性を検討するために、加振力を増強させるためのハードウエアの工夫や、その数値解析、加振周波数の最適化が必要となる。 一方で、超音波トランスデューサの位置を移動させた際の再現性が低い問題を解決する必要がある。 (1)では励磁コイル加振において、同一のコイルで50Hzから500Hz程度までの加振が可能な直列共振回路を作成し、また、再現性向上のためより広帯域超音波法で使用される超音波トランスデューサを調査し、より広帯域な超音波トランスデューサを用いて計測する超音波の周波数を最適化する。 (2)では、FEMシミュレーションにより樹脂シース管に加え、金属シース管のモデリングも行い、充填率を様々に変えた際の振動変位についてその加振周波数依存性を数値解析的に検討することで、実験との比較を行う。また、電磁界シミュレーションではトロイダル形状のコイルの形状最適化を行う。 (3)では,樹脂シース管に加え、金属シース管の充填率を様々に変えた供試体を作成し、実験的に振動変位を系統的に計測し。また、群馬県の土木整備課と協力し、実橋梁での実験や、橋梁の建て替え時に切り出した供試体等での実験を行い、本手法の妥当性を検証する。
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