研究課題/領域番号 |
19K22028
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
岩井 一正 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 准教授 (00725848)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | 宇宙天気予報 / 太陽嵐 / 気象レーダー / フェーズドアレイレーダー / 宇宙防災 |
研究実績の概要 |
本研究では、宇宙空間において太陽が原因で発生する災害の早期予報を目的とした「宇宙気象レーダー装置」の開発を行っている。情報通信衛星、宇宙ステーション、民間による宇宙旅行など、我々の生活基盤は近年急速に宇宙空間に進出している。太陽ではフレアと呼ばれる爆発現象が頻発し、その爆風が「太陽嵐」となって地球に到達する。このとき宇宙空間では地上でいうゲリラ豪雨のような激しい環境変動が発生し、衛星障害など人類の宇宙活動に深刻な影響が生じる。太陽フレアの発生は事前の予知が難しく、地球に到来する直前に、ようやく予報が可能となる。太陽嵐はまさに「宇宙版のゲリラ豪雨」と言える。この太陽嵐を地球近傍に到達する前に予報することが本研究の目的である。太陽嵐は希薄な電離した大気の塊のため電波を散乱する。そのため、天体観測中に太陽嵐が天体と地球の間を通過すると、散乱によって電波強度が激しく変動する。本研究ではこの散乱現象を地上電波観測で捉えることで、予報を実現する。計画初年度には同時に4方向を観測できるデジタルビームフォーム装置の開発に成功した。計画2年度にあたる本年度は、初年度に開発したフェーズドアレイ装置に自動較正機構を追加する開発研究を行った。その結果、各チャンネルに入力する信号の位相・振幅の誤差を自動で補償するアルゴリズムをFPGA上に実装することに成功し、既存のアナログシステムに対して較正の精度を向上し、加えて較正にかかる時間的コストの大幅な短縮にも成功した。実験室実験に加えて、本装置を簡便なダイポールアンテナに接続し試験した結果、所定の性能を持っていることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、昨年度に積み残しとなった装置の納品が完了し、加えて追加機能として自動較正機能を開発し、その試験を完了することができた。これによって、任意のアンテナに接続しフェーズドアレイ観測ができる目処がついた。加えて簡便なダイポールアンテナを多数購入することで、アンテナと装置を接続しての実験も実施することができた。以上より、概ね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに開発を行い概ね完成したデジタルフェーズドアレイ装置をアンテナに接続し天体のフェーズドアレイ観測を行う。特に強い電波源の観測を連続的に行い、太陽嵐によって天体からの電波が散乱される現象を捉えることで当初の目的であった「宇宙気象レーダー」の完成を目指す。また、得られたデータを解析し、散乱領域の2次元分布から太陽嵐までの距離がわかるのに加え、その時間変動から接近速度を求めることで、地球への到来時刻の正確な予報を初めて可能とする。これらの実験活動と並行して、本成果を論文にまとめて発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は新型コロナウィルスの影響で旅費が予定より大幅に減った。一方、装置開発では開発業者に頻繁にリーモート対応・オンライン対応をしてもらう必要が発生し、物品費に含まれる装置開発に関する費用は増加した。その結果、次年度使用額は発生したが、4千円未満であり、概ね計画通りに執行できたと言える。
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