本研究では、宇宙空間において太陽が原因で発生する災害の早期予報を目的とした「宇宙気象レーダー装置」の開発を行っている。情報通信衛星、宇宙ステーション、民間による宇宙旅行など、我々の生活基盤は近年急速に宇宙空間に進出している。太陽ではフレアと呼ばれる爆発現象が頻発し、その爆風が「太陽嵐」となって地球に到達する。このとき宇宙空間では地上でいうゲリラ豪雨のような激しい環境変動が発生し、衛星障害など人類の宇宙活動に深刻な影響が生じる。太陽フレアの発生は事前の予知が難しく、地球に到来する直前に、ようやく予報が可能となる。太陽嵐はまさに「宇宙版のゲリラ豪雨」と言える。この太陽嵐を地球近傍に到達する前に予報することが本研究の目的である。太陽嵐は希薄な電離した大気の塊のため電波を散乱する。そのため、天体観測中に太陽嵐が天体と 地球の間を通過すると、散乱によって電波強度が激しく変動する。本研究ではこの散乱現象を地上電波観測で捉えることで、予報を実現する。 計画年度及には同時に4方向を観測できるデジタルビームフォーム装置の開発に成功した。計画2年度には、初年度に開発したフェーズドアレイ装置に自動較正機構を追加する開発研究を行った。最終年度にあたらる本年度には、開発した装置を用いた較正やビームフォーミング実験を行うことと並行して、本研究の総括として、開発の成果を国内外の学会で発表した。更に、本装置を多数接続した大規模な観測システムによる本格的な宇宙気象レーダーの実現に向けた提言も行なった。
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