研究課題/領域番号 |
19K22032
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
藤原 義久 兵庫県立大学, シミュレーション学研究科, 教授 (50358892)
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研究分担者 |
日高 義将 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器科学研究センター, 専任研究員 (00425604)
初田 哲男 国立研究開発法人理化学研究所, 数理創造プログラム, プログラムディレクター (20192700)
井上 寛康 兵庫県立大学, シミュレーション学研究科, 准教授 (60418499)
土居 孝寛 大阪大学, 核物理研究センター, 特任助教(常勤) (50804910)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | 暗号資産 / ブロックチェーン / 決済システム / 複雑ネットワーク / 代数的トポロジー |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、ビットコインを代表とする暗号通貨を対象として、それら決済および取引価格の大規模なデータを収集して、その詳細な情報に基づいて、ユーザー間の通貨流通の全体像、すなわち決済ネットワークの構造とその時間的な変化、ならびに取引価格のダイナミクスを解明することである。本年度は以下の研究を実施した。 (1)暗号通貨のユーザー同定:暗号通貨のすべての決済データはブロックチェーンに累積して記録されており、過去に行われた膨大な数のすべての決済を追跡するための大規模データベースを昨年度構築した。同一の取引において複数入力したことがある場合には、ユーザーが使用したアドレスからユーザーを同定することができる。その同定に関するデータベースを研究メンバーで共有した。 (2)決済ネットワークの構造と変化の数理的な解析:ユーザーをノード、決済の流れを向きのあるリンクとするグラフ構造を決済ネットワークとして定義、その構造と時間変化を複雑ネットワーク科学の手法を用いて解析する。特に、決済の流れにおいて、誰がその「上流」「下流」に位置するのか、どれくらいの量の通貨が循環しているのかを明らかにするためのホッジ分解を上記データに適用して、主要なユーザーの間のお金の流れを解析した。 (3)さらに、お金の流れの主要な因子を発見するための非負値行列分解とその確率モデルを構築した。それが自然言語処理における確率的潜在意味解析と同等であることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下の研究成果をあげて、おおむね順調に進展している。 (1)暗号通貨のユーザー同定では、2020年夏までの全取引データから、13億の取引に出現した6.5億のアドレスからその60パーセント以上に対応する4億のユーザーを同定をすることに成功し、その結果を共有しながら研究を遂行した。(2)決済ネットワークの構造と変化の数理的な解析では、昨年度完了したホッジ分解の実装をもとにして、実データへの適用を行った結果を論文としてまとめて発表することができた。(3)新しい進展として、お金の流れの主要な因子を発見するための非負値行列分解とその確率モデルを構築して、それが自然言語処理における確率的潜在意味解析と同等であることから、今後の応用展開を行う土台を構築した。 なお、京都大学と米国Ripple社との暗号通貨に関する国際会議を共催して、メンバーがその国際会議「Blackchain 2021 in Kyoto」において発表するにいたった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度の研究を推進する方策を以下のように策定する。 (1)暗号通貨の大規模データベースの構築:今年度成功したユーザー同定を最新データについて行い、暗号通貨の価格データとともに整備して、現在進行中の新型コロナウィルスの感染にともなう資産の流れの時間変化などを解析する。 (2)今年度構築した非負値行列分解とその確率モデルを応用して、主要なユーザー間の資産の流れのうち、主要な潜在因子を見出すことによって、ダイナミクスの安定性・不安定性を解析して、価格変動などとの関係を調べる。 (3)最終年度のまとめとして、京都大学と米国Ripple社との暗号通貨に関する国際会議を共催、参加発表を行う計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
データ整備のための学生アルバイトに対する謝金を見込んでいたが、想定よりもデータ整備が軽微であったため。また、新型コロナウィルスの影響で予定されていた国際会議が中止となったため。
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