研究課題/領域番号 |
19K22033
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研究機関 | 国立情報学研究所 |
研究代表者 |
船守 美穂 国立情報学研究所, 情報社会相関研究系, 准教授 (70377141)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | 研究評価 / オープンサイエンス / 競争パラダイム / 協調パラダイム / プランS / 研究のマス化 / 学術情報流通 |
研究実績の概要 |
世界の「研究評価」に変化の兆しがある。当初、行きすぎた論文関連の量的指標を用いた研究評価を是正するために提唱された「研究評価のためのサンフランシスコ宣言(DORA)」は、量的指標の利用緩和を求める理想的提案で、あまり実効性がなかった。ところが、世界の学術情報流通を大きく即座完全オープンアクセスに転換する欧州研究助成機関中心のイニシアティブ「プランS」がDORAの精神に基づく研究助成を宣言し、実効性に一歩近づいた。また、EUのオープンサイエンス政策により研究データの管理・公開に向けた制度やインフラ整備が進んだことから、論文だけでなく研究データも評価することが現実味を帯びてきた。今後、研究データだけでなくプログラムコードなども含め、多様な学術コンテンツが評価されるようになるであろう。評価対象には、学術コンテンツそのものだけでなく、コンテンツの製作支援をするデータキュレーションなどの研究支援活動も含まれる。加えて、オープンサイエンス全般を推進するには、こうした支援的活動を含む、多様な研究への関わりを評価しなくては実現性が低いという観点から、研究評価のあり方を見直す動きが欧州の一部の大学や欧州大学協会などに生まれてきた。これらは主に欧州中心の動きであるが、一方では中国も2020年2月、行きすぎたトップジャーナル推奨を禁止し、さらに、応用の分野では学術論文を評価対象とせず、実質的な貢献のみを評価する方針を打ち出した。 競争パラダイムで世界の学術界に君臨する米国に動きは見えないが、欧州や豪州、中国は協調パラダイムの方向で対抗することを検討しだした形である。日本はいずれのパラダイムで戦うのか、岐路に立たされている。 このような世界の学術情勢を文科省を含む各方面にて講演した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究二年目は、産官学NPO関係者へのインタビュー調査や討論会を想定していた。しかし、新型コロナウィルス感染症の拡大のため、こうした人的リソースと知り合ったり、紹介してもらう機会を削がれ、計画が実行できなかった。 文献調査や論考に切り替えて研究は行ったが、当初の想定とズレが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
世界的パンデミックは引き続き収まる気配がないため、引き続き静かに文献調査および論考に励む。一方、オープンサイエンスおよび「研究のマス化」に伴う研究評価変革の動きが欧州にて出てきているため、これをウォッチしながら日本への示唆を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症拡大のため、当初想定していたインタビュー調査と討論会が実施できず、次年度への繰り越しが必要となった。 一方、2021年度も同様の状況が想定されるため、主に文献調査および国際会議への参加による論考に切り替え、研究を継続する。 2021年度は、本プロジェクト最終年度のため、知り得た範囲で知見を取りまとめ、発表する。
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