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2019 年度 実施状況報告書

格子欠陥レベルで拡散経路を壅蔽する新奇酸化抑制機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 19K22035
研究機関北海道大学

研究代表者

柴山 環樹  北海道大学, 工学研究院, 教授 (10241564)

研究分担者 中川 祐貴  北海道大学, 工学研究院, 助教 (00787153)
研究期間 (年度) 2019-06-28 – 2022-03-31
キーワード銅 / Heイオン / イオン照射 / 水中結晶光合成 / 酸化銅 / ナノ結晶 / 残留弾性歪
研究実績の概要

我々は、Heイオンを純銅に照射すると表面に酸化物結晶や酸化皮膜の形成が抑制する現象を見出した。もし、この現象が銅の格子間位置や粒界にHe原子が存在することによって酸素の拡散経路を塞ぎ酸化を抑制しているとすれば、プリント基板や端子として現在使用している銅の酸化抑制に塗布する防錆材や潤滑材の塗布は必要なくなり高価なめっきも不要となることから画期的な腐食防食法となり電子部品の長寿命化や環境低負荷に貢献できると考えられる。そこで、本研究では、純銅にHeイオン照射後の酸化挙動について、初年度はHeイオン照射量による銅表面や内部の微細組織や微細構造の変化について、電界放出型走査型電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて明らかにすることを目的とした。特に、銅の結晶方位に依存して、Heイオン照射によって結晶内部に導入される残留歪がどの様な影響を及ぼすかについて評価した。
供試材として、市販のCu多結晶と単結晶Cu(100)、Cu(110)、Cu(111)を用いた。Heイオン照射は、本学の線型300keVイオン加速器を利用した。加速電圧は、100kV、照射量は5×1016 He ions/cm2を目標に室温にて照射した。照射後の試料についてFE-SEMに附属するEBSDにより各領域の菊池マップを取得し、それらを歪がないとした領域の菊池マップと比較することによって残留弾性歪を測定するCross Court 3を利用して、照射領域と非照射領域の界面に誘起される残留弾性歪の各成分を評価した。その後、超純水中でUV照射を1試料につき48時間行い、表面に形成した酸化物についてFE-SEMによる微細組織観察と附属するEDSを用いて元素分析を行った。
以上のことから、Heイオン照射によって水中結晶光合成法における酸化物結晶成長が抑制されることを確認した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究に先立ち、我々は金属表面にナノスケールの凹凸(ナノバンプ)形成させ、水中で紫外線を照射しそれらを起点として様々な形態の酸化物ナノ結晶が成長することを明らかにした。その過程で、Heイオンを純銅に照射すると表面に酸化物結晶や酸化皮膜の形成が抑制する現象を見出した。先ず、本研究では、再現性に問題無いことを確認した。更に、試料の状態による効果を排除するために、コントロール材として一般のCu多結晶と結晶方位の効果を評価するために単結晶Cu(100)、Cu(110)、Cu(111)を用いた。更に、試料表面の状態が酸化やその後の酸化物結晶の成長に影響を及ぼすことがあるので、Cu基板のイオン照射を行う面を鏡面研磨して平滑にした基板を準備した。この基板を用いたことにより、表面の傷や凹凸等の元々酸化費膜が残存していたことによるartifactを排除できた。

今後の研究の推進方策

2年目からは、初年度に得られた結果を基に、多結晶と各面方位を有する単結晶Cu基板にHeイオンを照射後、水中結晶光合成法を用いて酸化させ、Cu基板表面に形成した酸化銅結晶の構造解析とEDS分析から化学式の決定を試みる。Heイオン照射量による銅表面や内部の微細組織や微細構造の変化について、FIBを用いて断面TEM試料を作製し、本学の収差補正走査透過型電子顕微鏡を使用して酸素の存在状態を原子レベルで観察することを試みる。具体的には、電子エネルギー損失分光(EELS)とエネルギー分散型X線分光(EDS)からマッピングを利用してその存在分布状況を可視化する。2年目後半から3年目にかけて、酸素ガス雰囲気での酸化実験を行い、水中結晶光合成法により形成したナノ酸化銅結晶との違いについて検討を行う。更に、原子レベルの高分解能観察が可能な複合量子ビーム超高圧電子顕微鏡を用いて酸化の様子を、ガス雰囲気あるいは液中セルを用いてその場観察し、Heイオン照射による酸化抑制機構について解明することに取り組む。以上の今後の研究により得られる結果と現在得られつつある断面のTEM観察を通じて電子エネルギー損失分光(EELS)とエネルギー分散型X線分光(EDS)からマッピングを利用して酸素やHeの存在や分布状況を可視化することにより格子欠陥レベルで拡散経路を壅蔽する新奇酸化抑制機構の解明に至ると考えている。

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公開日: 2022-12-28  

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